判旨
売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。
問題の所在(論点)
1. 訴訟における「念のための解除」という陳述が、予備的な解除の主張として認められるか。2. 催告を欠く解除の意思表示の効力はどうなるか。
規範
解除権の行使(民法540条、541条)が有効であるためには、債務不履行を理由とする場合は原則として相当期間を定めた催告が必要である。また、訴訟上の主張として予備的解除の意思表示を認めるには、単なる経緯の説明ではなく、独立した攻撃防御方法としての意思表示が文言上明確になされていることを要する。
重要事実
不動産の売買契約において、売主(上告人)が買主(被上告人)に対し、昭和23年6月末頃に契約解除をしたと主張した。さらに上告人は「昭和26年3月12日にも、念のため重ねて解除する旨を告げておいた」旨の陳述を行った。一方で、買主側は残代金の提供を行い、所有権移転登記を求めた。原審は、上告人が主張する昭和23年の催告および解除の事実を認めず、昭和26年の陳述も単なる事情説明に過ぎないとした。
あてはめ
上告人による「昭和26年3月12日に念のため重ねて解除する旨を告げた」との陳述は、その文言自体から、過去の解除の主張を補強するための事情説明に過ぎず、独立した予備的主張ではないと解される。仮にこれを解除の主張と認めたとしても、その前提となる催告の事実は原審によって否定されている。したがって、催告を欠く意思表示であり、解除としての法的効力は発生しないといえる。
結論
上告人の解除の抗弁は認められず、代金支払を完了した被上告人の所有権移転登記請求が認められる。
事件番号: 昭和32(オ)315 / 裁判年月日: 昭和33年7月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間が不相当に短い場合であっても、催告の時から相当期間が経過した後に解除の意思表示がなされれば、解除の効果は有効に発生する。 第1 事案の概要:本件不動産の売買契約に関連し、債権者が債務者に対して履行を催告した。債務者はこの催告に応じなかった。その後、債権者は解除の意思表示を行った。債務者(上…
実務上の射程
訴訟上、過去の解除の有効性を争いつつ、念のため現時点で再度解除する旨を主張(予備的解除)する場合には、事情説明と混同されないよう明確な主張を要する。また、催告が必要な場面で催告を欠いた解除は無効であるという基本原則を確認している。
事件番号: 昭和26(オ)355 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合や、予め受領を拒絶した場合には、債権者が契約を解除するにあたり、自己の債務の現実の提供を行う必要はない。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)は土地の売買契約を締結した。履行期日の定めはなかったが、分筆登記準備完了後に通知・請求し、…
事件番号: 昭和44(オ)330 / 裁判年月日: 昭和44年8月29日 / 結論: 棄却
商人間の土地の売買において、当事者の意思表示により、一定の日時または一定の期間内に履行をなさなければ、契約をした目的を達することができないときは、その売買は確定期売買と解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)505 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、右契約を解除しようとする当事者の債務の履行の提供は、催告に指定された履行期日にこれをすれば足りる。
事件番号: 昭和35(オ)1163 / 裁判年月日: 昭和36年3月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の目的物である土地が第三者によって競落され、当該第三者のために所有権移転登記がなされた場合、売主の債務は特段の事情のない限り履行不能に陥る。 第1 事案の概要:上告人(売主)は、被上告人(買主)に対して本件土地を売り渡したが、その後、当該土地が訴外Dによって競落された。さらに、当該土地につ…