双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、右契約を解除しようとする当事者の債務の履行の提供は、催告に指定された履行期日にこれをすれば足りる。
契約解除と同時履行の関係に立つ反対給付の履行の提供の時期。
民法541条,民法533条
判旨
双務契約の解除において、当初の履行期に履行の提供がなかったとしても、催告により指定された履行期に履行の提供を完了していれば、解除の効力は有効に発生する。
問題の所在(論点)
双務契約において、当初の履行期に履行の提供をしていなかった債権者が、その後の催告期間内に履行の提供をしてなした解除は有効か。また、解除の要件としての「履行の提供」が主張立証されているといえるか。
規範
双務契約において債務不履行を理由に契約を解除する場合、催告により指定された履行期において、自己の債務について同時履行の関係にある履行の提供を完了していれば足りる。当初の約定履行期における履行提供の有無は、解除の有効性を左右しない。
重要事実
売主B(被上告人)と買主A(上告人)との間で売買契約が締結された。当初の履行期には履行の提供がなされなかったが、BはAに対し、同年12月末日までに代金を支払うよう催告した。Bは、催告において指定された12月26日に、所有権移転登記に必要な書類を整えてA宅を訪れ、代金の支払を求めた(履行の提供)。しかし、Aが代金の全額支払を拒絶したため、Bは契約解除の意思表示をした。
事件番号: 昭和31(オ)686 / 裁判年月日: 昭和35年10月27日 / 結論: 棄却
一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。 二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
あてはめ
Bは催告により指定した履行期である12月26日に、登記必要書類を準備してA宅に赴いており、自己の負担する債務について履行の提供を完了したといえる。Aがこの提供に対し代金支払を拒絶した以上、Bによる契約解除の意思表示は有効である。また、このような履行の提供の事実は、売買契約の解除を主張する者の主張の中に当然に包含されていると解するのが相当であり、弁論主義の観点からも問題はない。
結論
Bによる本件契約解除は有効であり、Aの上告は棄却される。
実務上の射程
契約解除の有効性を争う実務において、当初の履行期経過後の催告時における履行提供の重要性を示す。答案上は、同時履行の抗弁権を消滅させるための履行の提供が、解除の意思表示の時点(または催告期間満了時)に存在すべきことを論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
事件番号: 昭和44(オ)330 / 裁判年月日: 昭和44年8月29日 / 結論: 棄却
商人間の土地の売買において、当事者の意思表示により、一定の日時または一定の期間内に履行をなさなければ、契約をした目的を達することができないときは、その売買は確定期売買と解すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)113 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同時履行の関係に立つ債務において、相手方を履行遅滞に陥らせて契約を解除するには、自己の債務の履行を提供した上で催告することを要し、履行の提供を伴わない解除は効力を有しない。 第1 事案の概要:不動産の売主(上告人)と買主(被上告人)との間で本件売買契約が締結された。本件契約において、買主の残代金支…
事件番号: 昭和26(オ)355 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合や、予め受領を拒絶した場合には、債権者が契約を解除するにあたり、自己の債務の現実の提供を行う必要はない。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)は土地の売買契約を締結した。履行期日の定めはなかったが、分筆登記準備完了後に通知・請求し、…