一 契約解除の前提としての催告が有効であるためには、少くとも催告と同時に相手方が遅滞に付されることを要する。 二 双務契約上の債務の受領遅滞にある者が契約解除の前提としての催告をするためには、受領遅滞を解消させた上でこれをしなければならない。
一 民法第五四一条の催告と付遅滞の要否 二 受領遅滞にある者のする催告の要件。
民法541条,民法413条
判旨
同時履行の関係にある双務契約において、債権者が受領遅滞にある場合、解除のための催告を有効になすには、受領遅滞を解消させるに足りる意思表示をした上で、自己の債務の提供(登記手続への協力等)を継続または再提供し、相手方を履行遅滞に陥らせる必要がある。
問題の所在(論点)
同時履行の関係にある双務契約において、受領遅滞に陥っている債権者が、自己の債務の提供を更新せず、かつ受領遅滞を解消させる意思表示もなしになした催告に基づき、契約を解除できるか。
規範
同時履行の関係にある債務において、相手方を履行遅滞に陥らせて契約を解除するためには、自己の債務の履行を提供し、相手方を履行遅滞に付すことが必要である。また、債権者が既に受領遅滞にある場合には、単に履行を請求するだけでは足りず、受領遅滞を解消させるに足りる意思表示をした上で催告をなすべきである。
重要事実
被上告人(買主)と上告人(売主)は、不動産の買戻契約に際し、財産税等(約3万円)の支払と引換えに畑4筆を返還する旨を合意した。被上告人は3万円、3万5千円、4万円と順次持参して提供したが、上告人は不当に増額を要求して受領を拒絶し、受領遅滞の状態となった。その後、上告人は自己の債務(所有権移転登記手続への協力等)の提供をすることなく、被上告人に対し代金の支払を催告し、不履行を理由に解除を主張した。
事件番号: 昭和35(オ)505 / 裁判年月日: 昭和36年6月22日 / 結論: 棄却
双務契約上の債務が同時履行の関係に立つ場合、右契約を解除しようとする当事者の債務の履行の提供は、催告に指定された履行期日にこれをすれば足りる。
あてはめ
本件約定は双務契約であり、特段の事情がない限り、代金支払と畑の返還(登記手続)は同時履行の関係にある。上告人は、被上告人が代金を提供した際に受領を拒んだことで受領遅滞に陥っていた。このような状況下で解除のための有効な催告をなすには、単に支払を求めるだけでなく、県知事の許可手続や登記への協力といった自己の債務の提供を行い、被上告人を履行遅滞に付す必要がある。また、自らの受領遅滞を解消させる意思表示もなされていない以上、本件催告は解除の前提として無効である。
結論
上告人のなした催告は解除の前提として効力を有さず、本件契約は依然として存続する。したがって、上告人による解除の主張は認められない。
実務上の射程
司法試験において、同時履行の抗弁権が付着する債務の履行遅滞解除を論じる際、単なる催告では足りず「履行の提供」が必要であることを示す重要判例である。特に、債権者側が過去の提供を拒絶して受領遅滞にある場合には、その受領遅滞を解消するような適切な提供と意思表示が解除の有効要件となる点を論証に組み込む際に用いる。
事件番号: 昭和27(オ)893 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
双方の給付が同時履行の関係にある場合反対給付の提供をしないでした催告にもとづく契約解除は効力を生じない。
事件番号: 昭和24(オ)113 / 裁判年月日: 昭和26年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】同時履行の関係に立つ債務において、相手方を履行遅滞に陥らせて契約を解除するには、自己の債務の履行を提供した上で催告することを要し、履行の提供を伴わない解除は効力を有しない。 第1 事案の概要:不動産の売主(上告人)と買主(被上告人)との間で本件売買契約が締結された。本件契約において、買主の残代金支…
事件番号: 昭和26(オ)355 / 裁判年月日: 昭和29年2月2日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合や、予め受領を拒絶した場合には、債権者が契約を解除するにあたり、自己の債務の現実の提供を行う必要はない。 第1 事案の概要:上告人(売主)と被上告人(買主)は土地の売買契約を締結した。履行期日の定めはなかったが、分筆登記準備完了後に通知・請求し、…
事件番号: 昭和29(オ)361 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
賃借人の居住する家屋の売買で、売主が賃借人に家屋の明渡をなさしめた上これを買主に引渡す約定のある場合、買主が、しばしば売主に対し、賃借人に家屋の明渡をなさしめてこれが引渡をなすべきことを督促し、その間常に残代金を用意し、明渡があればいつでもその支払をなし得べき状態にあつた上、売主が、買主とともに賃借人方に赴き売買の事情…