判旨
売買代金の支払事実が認められる場合であっても、それが客観的な面積の過誤に基づく精算の結果に過ぎないときは、当然に隣接地の売買契約が成立したとは認められない。
問題の所在(論点)
客観的な面積が不足している土地の代金として過剰な支払がなされた場合、その支払の対象となった隣接地部分について、当然に無条件の売買契約の成立を認めることができるか。
規範
特定の土地の売買契約成立の有無は、当事者の意思表示の合致を基準に判断すべきであり、代金の支払という事実はその一要素となり得るが、その支払が面積の差異に基づく調整の趣旨で行われたに過ぎない場合には、直ちに目的物の拡張(売買の成立)を認めることはできない。
重要事実
上告人は、宅地(イ)を360坪として、訴外人に対し60坪分(1坪あたり375円、計22,500円)の代金を支払った。しかし、実際には(イ)の土地は客観的に250坪に過ぎず、上告人が支払った代金に対応する坪数は、隣接地である(ロ)の土地に食い込む形となっていた。上告人は、この代金支払を根拠に、(ロ)の土地の一部についても売買契約が成立したと主張して争った。
あてはめ
上告人が支払った代金は、宅地(イ)が360坪あることを前提とした計算に基づくものである。しかし、事実認定によれば(イ)の土地は250坪しかなく、上告人が主張する支払事実は、結果として算出上の坪数が隣接地(ロ)に食い込んでいたという事態を生じさせているに過ぎない。このような面積の誤認に基づく代金の授受は、当事者間において(ロ)の土地を対象とする新たな売買の合意を形成したものとは評価できず、土地(ロ)の一部について無条件の売買成立を認める根拠としては不十分である。
結論
隣接地(ロ)の一部について売買の成立を認めることはできず、上告人の主張は採用できない。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
実務上の射程
契約の成否に関する事実認定の射程を示す。代金の支払という外形的事実があっても、それが計算上の錯誤や面積調整の趣旨である場合には、黙示の意思表示による契約成立を否定する有力な根拠となる。答案上は、不動産売買における目的物の特定や意思表示の合致を論じる際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)964 / 裁判年月日: 昭和40年10月8日 / 結論: 棄却
不動産の売主が、代金の一部の清算について、買主との間で、売主はその兄が買主に対して負担する借受金債務を引き受け、これと代金債務とを対当額で相殺する旨特約した場合において、当該売買契約は右借受金債務の弁済をも目的として締結されたものであるのに、買主は該債務の債権者ではない等同契約に関し原審の確定したような事情(原判決理由…
事件番号: 昭和31(オ)694 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の制限等により農地の自由な処分が禁止されている場合において、当該制限に抵触する態様で締結された売買契約は、当初から履行不能なものとして無効である。 第1 事案の概要:上告人らは、農地の売買契約の有効性を主張したが、当該農地は自作農創設特別措置法16条に基づき売渡しを受けたものであった。当時…
事件番号: 昭和29(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
昭和一六年一一月中に締結された代物弁済の予約について、債権者のなした予約完結の意思表示が、右予約成立後、物価の高騰した昭和二二年一〇月中になされた場合であつても、原審認定の事実関係(原判決参照)の下においては、右予約完結の意思表示は信義公平に反するものとは認められない。
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…