判旨
農地法上の制限等により農地の自由な処分が禁止されている場合において、当該制限に抵触する態様で締結された売買契約は、当初から履行不能なものとして無効である。
問題の所在(論点)
法令により農地の処分が制限されている状況下で締結された売買契約が、履行不能として無効になるか。また、脱法目的の合意が民法90条に抵触するか。
規範
法令(本件では昭和25年政令288号2条1項3号、自作農創設特別措置法28条等)により、特定の者が取得した農地について自作を廃める際の自由な処分が原則として禁止されている場合、これに反する売買契約は履行不能なものとして無効となる。
重要事実
上告人らは、農地の売買契約の有効性を主張したが、当該農地は自作農創設特別措置法16条に基づき売渡しを受けたものであった。当時の農地関係法令によれば、当該農地の受領者またはその包括承継人が自作を廃める場合、その農地を自由に処分することは原則として許されていなかった。
あてはめ
本件売買契約締結時、自作農創設特別措置法等の規定により、農地の売渡しを受けた者が自作を廃める際の自由な処分は原則として禁止されていた。このような法的制限が存在する以上、当該農地を対象とする売買契約は、客観的に履行が不可能な債務を目的とするものといえる。また、禁止規定を回避する意図でなされた合意についても、公序良俗違反の検討以前に、原審が認定した事実関係に照らせば有効とは認めがたい。
結論
本件売買契約は当初から履行不能であり無効である。また、禁止規定を回避するための合意が有効であるとの主張も認められない。
実務上の射程
法令による処分制限がある財産(農地等)を対象とした契約の効力を否定する際の論拠として、「当初からの履行不能による無効」という枠組みを示す。強行規定違反だけでなく、客観的な履行可能性の欠如という側面から契約の効力を否定する場面で活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)914 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 破棄差戻
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事件番号: 昭和29(オ)740 / 裁判年月日: 昭和31年5月18日 / 結論: 棄却
農地の売買契約において、臨時農地価格統制令(昭和一六年勅令第一〇九号)第三条第一項所定の最高価格を超過した代金額の約定があつたというだけでは、超過した代金額の約定部分が無効となるに止まり、統制価格の範囲内では契約は有効たるを失わない。
事件番号: 昭和31(オ)934 / 裁判年月日: 昭和32年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買代金の支払事実が認められる場合であっても、それが客観的な面積の過誤に基づく精算の結果に過ぎないときは、当然に隣接地の売買契約が成立したとは認められない。 第1 事案の概要:上告人は、宅地(イ)を360坪として、訴外人に対し60坪分(1坪あたり375円、計22,500円)の代金を支払った。しかし…
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