判旨
農地売渡計画の取消処分の取消しを求める訴えについて、新法の施行により当該計画の根拠法が廃止され、かつ新法に相当する規定がない場合には、当該処分の適否を判断するまでもなく訴えの利益を欠く。
問題の所在(論点)
旧法に基づく行政処分の取消しを求める訴訟において、新法の施行により当該処分の根拠規定が失われ、新法に相当する規定も存在しない場合、訴えの利益(現行行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
行政処分の取消しを求める訴訟において、当該処分の根拠となる法律が廃止され、かつ新法に当該処分(売渡計画等)に相当する規定が存在しない場合、あるいは新法の経過規定によっても当該処分の効力が維持されない場合には、当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益が失われるため、訴えは不適法となる。
重要事実
上告人は、自作農創設特別措置法(旧法)に基づく農地売渡計画の取消処分の取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟継続中に旧法が廃止され、農地法(新法)が施行された。農地法施行法13条は旧法の処分を新法の相当規定によるものとみなす旨を定めていたが、新法には旧法18条の売渡計画に相当する規定が存在しなかった。また、農地売渡に関する経過措置は同施行法3条で別途定められており、13条の適用外であった。
あてはめ
本件における農地売渡計画は、旧法独自の制度であり、新法である農地法にはこれに相当する規定が存在しない。農地法施行法13条の包括的な承継規定も、売渡に関する別段の経過規定(同法3条)が存在することから適用されない。したがって、仮に取消処分を無効と判断したとしても、根拠法の失効により当初の売渡計画が当然に有効性を維持し、上告人に所有権が移転する法的根拠が生じるわけではない。よって、本件処分の適否を判断するまでもなく、上告人が本訴によって得られる法律上の利益は消滅しているといえる。
結論
本件訴えは、農地法の施行によって訴えの利益を欠くに至ったものとして、不適法である(上告棄却)。
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…
実務上の射程
行政処分の根拠法が改正・廃止された場合の訴えの利益の有無を判断する際の規範として機能する。後行法に「相当する規定」があるか、または経過措置により処分の効力が存続しているかを確認し、取消判決によって原告が具体的な権利回復(本件では所有権取得の法的地位)を得られるかを検討する際に用いる。
事件番号: 昭和31(オ)694 / 裁判年月日: 昭和32年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の制限等により農地の自由な処分が禁止されている場合において、当該制限に抵触する態様で締結された売買契約は、当初から履行不能なものとして無効である。 第1 事案の概要:上告人らは、農地の売買契約の有効性を主張したが、当該農地は自作農創設特別措置法16条に基づき売渡しを受けたものであった。当時…
事件番号: 昭和38(オ)814 / 裁判年月日: 昭和40年8月31日 / 結論: その他
一旦有資格者に売り渡された農地を他の農地等との交換の目的を実現させるため重ねて第三者に売り渡すがごときことはたとえそれがさきに売渡を受けた者の意思に反しない場合においても、法律上許されないものといわなければならない。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1385 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が判決によって取り消された場合、当該処分は遡及的に効力を失い、その処分が存在しない状態が前提となる。そのため、先行処分の効力回復を無視してなされた後発の売渡処分等は、目的物の権利帰属関係に矛盾を生じさせるため無効である。 第1 事案の概要:知事Aは被上告人Bに対し、昭和23年2月2日を売渡…