判旨
行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
問題の所在(論点)
行政庁が以前に行った売渡処分の効力を否定し、その旨を通知する「取消通知」が、抗告訴訟の対象となる「行政処分」に該当するか。
規範
処分性(行政事件訴訟法3条2項)の有無は、その行為が国民の権利義務を直接に変動させる法的効果を有するもの(公権力の行使)であるか否かによって判断される。既になされた処分の取消しや効力喪失を告知する通知であっても、それが実質的に相手方の法的地位を否定し、新たな法的効力を伴う場合には行政処分性が認められる。
重要事実
上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭和26年になり、上告人は「右通知はこれを取り消し、失効させたから通知する」旨の書面を送付した。被上告人らは、この昭和26年の通知(取消通知)を不服として、その取消しを求める訴えを提起した。
あてはめ
本件通知は、単なる事実上の事後報告ではなく、既に成立していた売渡処分の法的効力を遡及的に消滅させることを対外的に宣言するものである。これにより、被上告人らが有していた農地取得に関する法的地位(売渡を受ける権利)が実質的に否定され、権利義務に直接の影響を及ぼす。したがって、裁判所がこの通知を「抗告訴訟の対象となる行政処分」の性質を持つものと判断し、司法審査の対象とすることは正当である。
結論
本件の通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
実務上の射程
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
行政庁が「通知」という形式を用いても、それが先行する有利な処分の撤回や取消しの実質を有し、相手方の法的地位に変動をもたらす場合は処分性が認められる。答案では、単なる事後連絡(観念の通知)と、法的効果を伴う行政処分を区別する際のメルクマールとして活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。
事件番号: 昭和29(オ)317 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 破棄差戻
一筆の農地を四人に分割して売渡した場合において、各人に対する売渡区域が売渡通知書に特定されていなくても、その後に右農地が売渡通知書の趣旨に従つて分筆登記され特定されたときは、さきの売渡処分が無効であるとはいえない。