国税徴収法九六条に基づく公売の通知は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたらない。
国税徴収法九六条に基づく公売の通知と抗告訴訟の対象
国税徴収法96条,行政事件訴訟法3条
判旨
滞納処分としての公売の通知は、行政庁が公売を行う準備行為として特定の者に通知するものであり、それ自体によって国民の権利義務を直接確定する法的効果を有しないため、行政事件訴訟法上の「処分」には当たらない。
問題の所在(論点)
滞納処分における「公売の通知」が、行政事件訴訟法3条2項に規定される「行政庁の処分」に該当し、抗告訴訟の対象となるか。
規範
行政事件訴訟法3条2項にいう「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいい、公権力の主体たる行政庁が行う行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
重要事実
租税滞納処分に基づき、税務当局が滞納者の財産を公売に付するに際し、法律の規定に従って関係者に対して公売の通知を行った。これに対し、滞納者等が当該通知の取り消しを求めて抗告訴訟を提起した事案である。
あてはめ
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…
公売の通知は、公売手続という一連の行政過程において、後に続く公売実施の要件として、滞納者等に対して事前の告知・弁解の機会を与える準備的な行為に過ぎない。この通知自体によって、直ちに滞納者の財産の所有権が移転したり、新たな義務が課されたりするなどの法的効果が発生するものではない。したがって、国民の権利義務を直接左右する性質を備えていないといえる。
結論
本件公売の通知は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分には当たらない。したがって、これに対する取消訴訟は不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
手続的行為の処分性に関する重要判決である。後続する公売処分自体は処分性が認められるが、その準備行為に過ぎない通知については否定される。答案上は、一連の手続過程における「直接的・対外的な法的効果」の有無を論ずる際の基準として活用する。なお、類似の通知行為であっても、法律上の効果が直結する場合は結論が異なる可能性がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和31(オ)592 / 裁判年月日: 昭和33年5月24日 / 結論: 棄却
一 国税局長に異議申立書と題する書面の提出があつても、右書面が、公売財産の所有者から提出され、不服のある処分が具体的に明示され、不服の理由も記載されている以上、国税徴収法第三一条の二による再調査請求があつたものと認めるべきである 二 審査決定で却下の再調査決定を是認するとともに、原処分の適否をも審理判断した場合に、裁判…
事件番号: 昭和40(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
滞納者の所有財産に対する滞納処分が、その滞納者の滞納税金のみならず、誤つて他の者の滞納税金をも徴収するために行なわれた場合には、右処分の瑕疵は、他の滞納者の滞納税金に対するものとしてなされた部分についてのみ存し、その滞納処分全体を違法ならしめるものではない。
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和37(ク)167 / 裁判年月日: 昭和37年8月28日 / 結論: 却下
最高裁判所のした決定に対し特別抗告を申し立てることはできない。