一 国税局長に異議申立書と題する書面の提出があつても、右書面が、公売財産の所有者から提出され、不服のある処分が具体的に明示され、不服の理由も記載されている以上、国税徴収法第三一条の二による再調査請求があつたものと認めるべきである 二 審査決定で却下の再調査決定を是認するとともに、原処分の適否をも審理判断した場合に、裁判所は、右却下決定を違法と判断したときは、原処分の適否についても、審理裁判することができる 三 公売処分取消訴訟においては、審査決定をした国税局長も被告適格がある 四 国税徴収法による不動産差押の効力は差押調書謄本の滞納者に対する交付のあつたときに生ずる 五 不動産差押の効力発生前にした公売公告は違法である
一 国税局長への異議申立書と題する書面の提出の国税徴収法第三一条の二の再調査請求としての適否 二 審査決定で却下の再調査決定を是認するとともに原処分の適否を判断した場合における裁判所の原処分の適否審理 三 公売処分取消訴訟における審査決定をした国税局長の被告適格 四 国税徴収法による不動産差押の効力発生時期 五 不動産差押効力発生前にした公売公告の適否
国税徴収法31条ノ2,国税徴収法31条ノ4,国税徴収法23条ノ3,国税徴収法24条1項,行政事件訴訟特例法3条,国宝施行規則16条,国宝施行規則19条,国宝施行規則22条
判旨
行政不服申立が誤って処分庁以外の権限ある上級行政機関に提出された場合、当該機関はこれを誠実信義の原則に基づき正当な決定機関へ回送すべき義務があり、提出時に適法な申立があったと解すべきである。また、差押の効力は滞納者への差押調書謄本の交付によって生じ、公売公告期間の算定も差押の効力発生時を基準とすべきである。
問題の所在(論点)
1. 誤った行政機関(上級庁)に提出された不服申立書の有効性。2. 不動産の滞納処分における差押の効力発生時期。3. 差押効力発生前になされた公売公告の適法性と公告期間の算定基準。
規範
1. 行政不服申立が誤って処分庁の上級行政機関に提出された場合、行政機関の誠実信義上の義務として、これを正当な決定機関に回送すべきであり、提出時に適法な不服申立があったものとみなす。2. 不動産の滞納処分における差押の効力は、滞納者に対する関係では差押調書の謄本を交付した時に発生する。3. 公売公告期間(国税徴収法施行規則22条)は、有効な差押が前提となるため、差押の効力発生前に公告がなされた場合は、差押効力発生時から期間を算定すべきである。
重要事実
税務署長が行った公売処分に対し、被上告人は「異議申立書」と題する書面を国税局長に提出した。国税局長はこれを正当な再調査請求ではない等と主張したが、原審は適法な申立と認めた。また、公売物件のうち建物9棟について差押調書の謄本が被上告人に交付されないまま公売公告がなされ、登記のみが行われていた。さらに、公売公告の内容に物件明細の表示が欠けており、公告から公売までの期間も差押効力発生を基準にすると法定の10日を満たしていなかった。
あてはめ
1. 国税局長は税務署長への監督権を有し、一般国民にとって権限分配は必ずしも明白ではないため、期間内に提出された以上、誠実信義の原則により適法な申立として扱うべきである。2. 差押は滞納者の権利を制限する処分であるから、調書謄本の交付を欠く建物9棟については、登記があっても差押の効力は生じていない。3. 公売手続は有効な差押を前提とする。差押効力発生前にされた公告の違法性が治癒されるとしても、法定の10日間の期間は、公告が適法となる「差押の効力発生日」から起算すべきであり、本件では期間不足の違法がある。
結論
本件再調査請求は適法であり、前審の却下決定は誤りである。また、建物9棟の差押は効力を生じておらず、公売公告の手続にも物件明細の欠如および期間不足の違法があるため、本件公売処分は取り消されるべきである。
実務上の射程
行政庁の教示ミスや国民の誤認による不服申立の救済(信義則)を認める際の有力な根拠となる。また、差押効力の発生要件(謄本交付)と公売手続の前後関係を厳格に要求する実務上の指針を示すものである。
事件番号: 昭和29(オ)122 / 裁判年月日: 昭和31年4月24日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】国税滞納処分による差押えにおいても民法177条の適用があり、国が「第三者」に該当しないというためには、単に滞納処分の過程で事情を知っていただけでは足りず、納税者の信頼を強く裏切るような「特段の事情」が必要である。 第1 事案の概要:国(上告人)が滞納処分として不動産を差し押さえた際、当該不動産は登…
事件番号: 昭和33(オ)738 / 裁判年月日: 昭和35年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法上の公売処分において、見積価額を記載した封書を公売場所に置くべき手続規定に違反があったとしても、その違法は公売処分を当然に無効とする程度の瑕疵とはいえない。 第1 事案の概要:税務署長が行った建物の公売処分において、見積価額が69万9000円と査定されていた。しかし、当時の施行規則23条…
事件番号: 昭和33(オ)351 / 裁判年月日: 昭和34年4月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】国税徴収法に基づき公売に付しても買受人がない物件を随意契約により売却する場合において、一度の公売実施で買受希望者がなかったことをもって直ちに随意契約へ移行することは適法である。 第1 事案の概要:課税当局が本件物件について公売を実施したが、昭和30年11月28日の公売期日において入札人が現れなかっ…
事件番号: 昭和40(行ツ)109 / 裁判年月日: 昭和43年7月16日 / 結論: 棄却
滞納者の所有財産に対する滞納処分が、その滞納者の滞納税金のみならず、誤つて他の者の滞納税金をも徴収するために行なわれた場合には、右処分の瑕疵は、他の滞納者の滞納税金に対するものとしてなされた部分についてのみ存し、その滞納処分全体を違法ならしめるものではない。