昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
昭和二四年法律第二一五号による改正前の農地調整法第四条の承認と市町村農地委員会の裁量権
農地調整法(昭和24年法律35号による改正前)4条
判旨
行政処分について客観的な基準が法令に定められていない場合でも、当該処分の性格が個人の自由の制限であるときは、法律の目的に必要な限度においてのみ拒否し得るのであって、行政庁の広範な自由裁量に属するものではない。
問題の所在(論点)
農地調整法4条に基づく賃借権設定の承認が行政庁の自由裁量に属するか。また、申請書の形式が「届出」となっている場合に、行政庁はこれを無視してよいか。
規範
農地に関する権利移動の承認は、本来自由契約に委ねられるべき事項を小作権保護の観点から制限するものである。したがって、承認について客観的基準が明定されていない場合であっても、行政庁は法律の目的に必要な限度においてのみ承認を拒むことができるにすぎず、農地委員会の全面的な自由裁量に委ねられているわけではない。また、申請書類の形式に不備があっても、実質的に承認を求める趣旨であれば、行政庁はこれを適切に処理すべき義務を負う。
重要事実
被上告人は農地の賃借権設定につき、法令に規定される承認申請書ではなく「耕作変更届」という名称の書面を提出した。行政庁側は、改正前の農地調整法4条が承認の客観的基準を設けていないことを理由に、承認の可否は自由裁量に属し、当該届出を単なる陳情書として処理しても違法ではないと主張して争った。
事件番号: 昭和27(オ)1064 / 裁判年月日: 昭和29年3月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法に基づく買収農地の売渡相手の選定は、農業委員会の自由な裁量に委ねられており、その行使が著しく不合理でない限り適法である。 第1 事案の概要:上告人は、本件農地を含む土地を50万円で買い受けた実態があったが、農業委員会は本件農地の売渡計画において、上告人以外の第三者を売渡の相手方…
あてはめ
農地調整法が承認制をとるのは個人の自由の制限にほかならない。法律が承認の基準を欠いているとしても、法の目的に照らして必要な限度を超えて承認を拒むことは許されない。本件において、被上告人が法律に疎いために「変更届」として提出したとしても、その実質が承認を求めるものである以上、行政庁はこれを適法な申請として取り扱うか、あるいは訂正を求めるべきであり、漫然と陳情書として処理することは許されない。
結論
行政庁の処分は自由裁量ではなく、法の趣旨に反して承認を与えないことは違法である。したがって、被告(行政庁側)の上告は棄却される。
実務上の射程
行政裁量の逸脱・濫用を判断する際、特に「本来は自由な活動に対する制限」という処分の性質から裁量の幅を狭く解釈する論法として活用できる。また、書面の名称のみにとらわれず申請の真意を読み取るべきという行政手続上の信義則的判断としても有用である。
事件番号: 昭和38(オ)1399 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法による宅地附帯買収および売渡の対象となつた二筆の宅地の各一部が第三者の賃借地であつたことが判明し、しかもその賃借地の境界が不明瞭なため、知事が全部の売渡処分を取消した場合につき、そのうち一筆についての取消処分は適法、他の一筆についての取消処分は違法と判断しても、判示の事情のもとにおいては、いずれも相…
事件番号: 昭和29(オ)377 / 裁判年月日: 昭和31年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分に瑕疵がある場合であっても、その瑕疵が重大かつ明白でない限り、当該処分は当然無効とはならず、適法に訴訟等で取り消されない限り有効なものとして取り扱われる。 第1 事案の概要:上告人は、大正10年頃から昭和10年頃まで賃借権に基づき本件土地を耕作していた。自称によれば、昭和10年にDへ転貸し…
事件番号: 昭和27(オ)821 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法23条に基づく農地の交換について、原審で争われていない事項や原判決の判示事実に照らし違法がない場合は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、自作農創設特別措置法23条に基づく農地の交換の適否等を理由として上告を申し立てた。しかし、当該交換の適否については原審…
事件番号: 昭和35(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。