農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は行政庁の処分か。
行政事件訴訟特例法1条,農地法36条,農地法37条,農地法38条
判旨
行政庁の行為が取消訴訟の対象となる「行政処分」に該当するためには、国民の具体的権利義務を直接形成・確定する効力を有する必要がある。農業委員会の売渡決議や知事への進達は、行政機関内部の意思決定手続に過ぎず処分性は認められない。
問題の所在(論点)
農業委員会による農地の売渡決議、および知事に対する売渡しの進達は、行政事件訴訟特例法(現行の行政事件訴訟法3条1項)にいう「行政庁の処分」にあたるか。
規範
取消訴訟の対象となる行政庁の処分とは、行政庁の行為が相手方その他国民の具体的権利義務を形成し、またはその範囲を確定する法律上の効力を有するものをいう。行政機関の内部的な意思決定手続や、行政機関相互間の行為に過ぎず、外部に対して直接上記のような効力を及ぼさないものは、行政処分にあたらない。
重要事実
耕作者が農地の買受申込みをした際、農業委員会(被上告委員会)がその農地を売り渡すべき旨の決議を行い、農地法38条に基づき知事に対してその旨を進達した。これに対し、当該決議及び進達の取消しを求めて訴えが提起された。
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
あてはめ
本件における農業委員会の売渡決議は、売渡しに向けた行政機関としての内部的な意思決定手続として行われたものに過ぎない。また、知事への進達も行政機関相互間の行為である。これらはいずれも、それ自体によって直接国民の具体的権利義務を形成・確定する効力を外部に対して及ぼすものではないため、処分性の要件を満たさない。
結論
本件の売渡決議及び進達はいずれも行政処分には当たらない。したがって、これらに対する取消訴訟は不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
行政庁の行為が最終的な法効果を生じさせる前段階の準備的・中間的行為にとどまる場合、処分性が否定されることを示した典型例である。答案では、行政過程における一連の行為のうち、どの段階で国民の法的地位が確定するかを特定する際の基準(直接的法効果の有無)として用いる。
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和28(オ)1385 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が判決によって取り消された場合、当該処分は遡及的に効力を失い、その処分が存在しない状態が前提となる。そのため、先行処分の効力回復を無視してなされた後発の売渡処分等は、目的物の権利帰属関係に矛盾を生じさせるため無効である。 第1 事案の概要:知事Aは被上告人Bに対し、昭和23年2月2日を売渡…
事件番号: 昭和38(オ)1399 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法による宅地附帯買収および売渡の対象となつた二筆の宅地の各一部が第三者の賃借地であつたことが判明し、しかもその賃借地の境界が不明瞭なため、知事が全部の売渡処分を取消した場合につき、そのうち一筆についての取消処分は適法、他の一筆についての取消処分は違法と判断しても、判示の事情のもとにおいては、いずれも相…