判旨
行政処分が判決によって取り消された場合、当該処分は遡及的に効力を失い、その処分が存在しない状態が前提となる。そのため、先行処分の効力回復を無視してなされた後発の売渡処分等は、目的物の権利帰属関係に矛盾を生じさせるため無効である。
問題の所在(論点)
先行する行政処分(売渡処分)を一度は取り消したものの、その取消処分自体が判決で取り消されて先行処分の効力が回復した場合、先行処分と矛盾する後発の売渡処分の効力はどうなるか。
規範
行政処分を取り消す旨の判決が確定した場合、当該処分は当初から存在しなかったものとみなされる(遡及効)。また、先行する権利付与処分が有効に存在することを前提とする場合、その後に同一の対象物に対してなされた重複する処分は、権利関係の矛盾を招くものとして当然に無効となる。
重要事実
知事Aは被上告人Bに対し、昭和23年2月2日を売渡時期とする農地の売渡処分を行った。その後、AはこのBへの売渡処分を取り消したが、この「取消処分」をさらに取り消す判決が確定した。一方で、知事Aおよび農地委員会Dは、Bへの取消処分が有効であることを前提として、参加人C1・C2らに対し、同一の農地を対象とする売渡処分および売渡計画を策定していた。Bは、自己への売渡処分の有効性と、Cらに対する処分の無効確認を求めて提訴した。
あてはめ
まず、Bに対する売渡処分をさらに取り消した判決が確定している以上、Bに対する当初の売渡処分は有効に存続している。同処分により、農地は昭和23年2月2日をもってBの所有に帰したことが確定する。そうであるならば、同一の農地を対象として後になされた、参加人C1に対する売渡処分およびC2を相手方とする売渡計画は、既にBに帰属している権利を重ねて処分しようとするものであり、法的に成立し得ない。したがって、これら後発の処分等は当然に無効と解される。
結論
Bに対する売渡処分の効力が確定している以上、これと両立しない後発のCらに対する売渡処分および売渡計画は無効である。
事件番号: 昭和35(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。
実務上の射程
行政処分の取消判決の遡及効(形成効)を前提に、二重処分の無効を導く論理を示す際に活用できる。先行処分が有効である以上、後発処分は「処分の対象(目的物)の欠如」や「法的な両立不能」を理由として無効となると説明する。民事上の二重譲渡の理屈とは異なり、行政処分の効力確定による物権的帰属の排他性を強調する文脈で有効である。
事件番号: 昭和28(オ)1330 / 裁判年月日: 昭和30年12月2日 / 結論: 棄却
農地売渡処分の取消処分に対する出訴期間については、自作農創設特別措置法第四七条の二の規定によるべきではなく、行政事件訴訟特例法第五条の規定によるべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1399 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法による宅地附帯買収および売渡の対象となつた二筆の宅地の各一部が第三者の賃借地であつたことが判明し、しかもその賃借地の境界が不明瞭なため、知事が全部の売渡処分を取消した場合につき、そのうち一筆についての取消処分は適法、他の一筆についての取消処分は違法と判断しても、判示の事情のもとにおいては、いずれも相…
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。