判旨
代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。
問題の所在(論点)
実際に契約交渉や払い下げの手続きを担当した者が存在する合、その者を直ちに契約当事者(権利取得者)と認めるべきか、あるいは代理人としての行為に過ぎないと解すべきかが争われた。
規範
契約の当事者が誰であるかの確定については、契約締結の交渉を実際に行った者が誰であるかという事実のみならず、その者が誰の代理人として行動していたか、真の買受主体は誰であるかという観点から、諸証拠を総合して合理的に判断すべきである。
重要事実
第一審参加人Eは、被上告人らの先代Fの代理人として、Dから土地を買い受け、また国から山林の払い下げを受けた。これに対し、上告人はDの証言等を根拠に、実際に交渉の衝に当たったEこそが真の買受人・払受人であると主張して、原審の事実認定の違法を訴えた事案である。
あてはめ
原判決は、Dの証言を検討した上で、Eが土地の買受けや払い下げの事務に直接当たった(交渉の衝に当たった)事実は認めた。しかし、その事実はあくまでEが「Fの代理人」として行動したことを推知させるに留まる。E自身が「真の買受人」であることを裏付ける証拠としては不十分であり、証拠を総合すればFを権利主体と認定するのが相当であると評価した。最高裁もこの判断に違法はないとした。
結論
Eが交渉に当たった事実は認められるものの、それは代理人としての行為に過ぎず、真の買受人と認めることはできない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
契約当事者の確定に関する事実認定のあり方を示すものである。司法試験においては、民法上の代理の成否や、他人の名義を用いた契約(名義貸し等)における当事者確定の論点において、具体的な交渉経緯と帰属主体の峻別を論じる際の参考となる。実務上は、代理人の行為が本人に帰属するという認定プロセスを補強する判例として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和31(オ)818 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成否を判断するにあたり、相手方が代理権があると信じたことに正当な理由があるかは、過去の交渉経緯や取引条件の合理性を総合して判断されるべきである。本件では、本人が過去に高値での売却を主張して拒絶した経緯や、代理人が提示した価格が本人の希望を大きく下回る点等に照らし、過失が認められ表見代理は…
事件番号: 昭和34(オ)726 / 裁判年月日: 昭和37年9月14日 / 結論: 破棄差戻
丙を代理人として、甲の先代から不動産を買い受けた乙が、丙にその所有権を移転する意思がないにも拘らず、たまたま右の売買契約書に買主名義が丙となつていた関係上、丙をして甲に対する所有権移転登記手続請求の訴を提起させ、その勝訴の確定判決に基づいて甲より丙に所有権移転登記を受けさせた場合には、民法第九四条第二項の法意に照し、乙…
事件番号: 昭和30(オ)648 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当の理由」の有無は、事実認定の問題であり、原審が証拠に基づいてこれを否定した判断は違法ではない。 第1 事案の概要:上告人の代理人Dが、訴外Eに被上告人を代理して本件土地を売却する権限があるものと信じて取引を行った。上告人は、Dがそのように信じたことについて「正当の理由…