甲名義の不動産につき、甲から乙、乙から丙への順次の相続を原因として直接丙に対する所有権移転登記がされているときに、右登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することはできない。
甲名義の不動産につき乙、丙が順次相続したことを原因として直接丙に対してされた所有権移転登記を甲の共同相続人丁及び乙に対する所有権移転登記並びに乙から丙に対する持分全部移転登記に更正することの可否
民法882条,民法896条,民法898条,不動産登記法63条,不動産登記法66条
判旨
既存の単独所有名義の登記を、共有名義への変更及びその後の持分移転という二段階の登記に改める更正登記は、登記の同一性を欠き許されないが、真の権利関係を反映させるための「真正な登記名義の回復」等を原因とする移転登記や保存登記の更正として認容すべきである。
問題の所在(論点)
単独名義の所有権移転登記または保存登記を、共有名義への変更およびその後の持分移転という内容に改める更正登記請求は認められるか。また、かかる請求の法的性質をどう解すべきか。
規範
更正登記は、錯誤または遺漏により登記と実体関係の間に原始的不一致がある場合、その同一性を保持しつつ一部を訂正補充するものである。したがって、更正前後で登記名義人や登記の個数が異なり、登記としての同一性を欠く場合には、更正登記の方法によることは認められない。
重要事実
不動産の元所有者Dが死亡し、被上告人(Dの三男)やF(Dの二男、既に死亡し上告人らが相続)らが共同相続した。しかし、本件各不動産には、相続等を原因として、Fの相続人である上告人A1またはA2の単独所有名義とする登記がなされていた。被上告人は、遺産分割協議の不存在等を理由に、これら単独名義の登記を「F・被上告人の共有名義」に更正した上で、さらに「Fの持分を上告人らに移転する」という二段階の登記内容に改める更正登記手続を請求した。
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
あてはめ
被上告人が求める更正登記は、名義人を単独から共有に変更するだけでなく、一個の登記を二個の登記(共有への更正と持分移転)に分割するものであり、名義人および個数の点で同一性を欠く。しかし、訴訟の趣旨は被上告人の現在の持分四分の一を登記簿上に反映させる点にある。そこで、移転登記については「真正な登記名義の回復」を原因とする持分一部移転登記手続として、保存登記については「持分割合の訂正」を目的とする更正登記手続として、それぞれ認容するのが相当である。
結論
更正登記としての請求は同一性を欠くため認められないが、真正な登記名義の回復による持分一部移転登記、または適正な持分割合への保存登記の更正として請求を認容する。
実務上の射程
登記手続の形式的正確性(同一性)を厳格に解す一方で、原告の合理的な意思を汲み取り「真正な登記名義の回復」等への請求の引き直しを認める実務上の指針となる判例である。答案上は、更正登記の限界を論ずる際の規範として、また登記請求権の解釈における原告の意図の合理的把握の例として有用である。
事件番号: 平成9(オ)953 / 裁判年月日: 平成11年3月9日 / 結論: その他
一 被相続人の生存中に相続人に対し売買を原因としてされた所有権移転登記について、被相続人の死亡後に、相続を原因とするものに更正することはできない。 二 被相続人の生存中にその所有する不動産につき共同相続人の一人である甲に対し仮空の売買を原因として所有権転移登記がされ、甲が第三者乙のために抵当権設定登記をした場合には、被…
事件番号: 昭和28(オ)111 / 裁判年月日: 昭和31年7月27日 / 結論: 破棄差戻
不動産の譲渡人から与えられた代理権に基き、譲渡人の死亡後同人の代理人名義の申請によつてなされた移転登記は、それが現在の真実な権利状態に符合するものである限り、対抗力を有し、譲渡人の相続人は譲受人に対し、その抹消を請求することはできない。
事件番号: 昭和41(オ)1097 / 裁判年月日: 昭和42年6月6日 / 結論: 棄却
不動産の所有権が順次甲、乙、丙と譲渡された場合に、甲が乙に対し所有権移転登記をする意思で、登記申請書類を交付していたときは、甲の右登記申請意思は、丙が右書類を利用して甲から丙に直接所有権移転登記をすることを無効たらしめるものではない。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…