一、判示の事情により、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに、乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合において、右両不動産の価額と弁済期までの債務元利金額とが合理的均衡を失するときは、債権者は、特別な事情のないかぎり、右両不動産を換価処分してこれによつて得た金員中から元利金の弁済を受けることができるにとどまるものと解すべきである。 二、右の場合において、債務者は、債権者が甲不動産につき予約完結権を行使して所有権移転登記手続を経由した後であつても、換価処分をするまでは債務を弁済して甲乙両不動産を取り戻すことができるものと解すべきである。
一、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合と債権者の清算義務 二、右契約関係のもとで債権者が清算義務を負う場合において債務者が債務を弁済して甲乙両不動産を取り戻すことができる時期
民法369条,民法482条
判旨
不動産の代物弁済予約において、契約時の不動産価額と弁済期までの元利金額が合理的均衡を失する場合、特段の事情がない限り、債務者は債権者による換価処分前であれば、債務を弁済して物件を取り戻すことができる。
問題の所在(論点)
代物弁済予約の形式をとる担保契約において、物件の価額と債務額が著しく不均衡な場合、予約完結の意思表示によって目的物の所有権が確定的に債権者に帰属し、債務者は受戻権を失うか。
規範
貸金債権担保のため不動産につき代物弁済予約等が締結された場合において、契約時における当該不動産の価額と弁済期までの元利金額とが合理的均衡を失するときは、特段の事情のない限り、当該契約の実質は担保権設定契約と同視すべきである。この場合、債権者は目的物件を換価処分して優先弁済を受け、超過分を返還する義務を負う。また、債務者は予約完結後であっても、債権者の換価処分前であれば、債務を弁済して目的物件を取り戻すことができる。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
重要事実
上告人は被上告人からの借受金債務を担保するため、建物(甲)には抵当権設定及び代物弁済予約(不履行時に所有権を移転させる約定)を、宅地(乙)には土地区画整理中のため所有名義変更手続を行った。弁済期徒過後、被上告人が甲につき所有権移転登記をしたい旨の意思表示をしたため、原審は甲乙両物件の所有権が確定的に被上告人に移転し、上告人の返還請求は認められないと判断した。これに対し、上告人は契約時の物件価額と債務額が均衡を失している旨を示唆する主張を行っていた。
あてはめ
本件では、当初の意図は抵当権設定にあり、便宜上代物弁済予約等の形態がとられたにすぎず、実質は担保契約である。記録上、契約当時の物件価額と元利金額が合理的均衡を失う可能性が窺える。もし不均衡が認められるならば、被上告人の権利は換価処分により優先弁済を受ける範囲に限定される。したがって、被上告人が物件を換価処分する前であれば、上告人は債務を弁済して物件を取り戻し得ると解される。原審は、この不均衡の有無や換価処分の存否を審理せず確定的な移転を認めており、審理不尽の違法がある。
結論
代物弁済予約の形態であっても、物件価額と債務額が不均衡な場合は実質的な担保権として機能するため、債務者は債権者の換価処分前であれば弁済による物件の受戻しが可能である。
実務上の射程
譲渡担保や代物弁済予約等の「非典型担保」において、暴利行為的な所有権取得を制限し、清算義務(受戻権)を認める際の基本枠組みとして機能する。司法試験では、仮登記担保法制定前の法理として、または同法の適用がない場面での解釈指針として活用できる。
事件番号: 昭和41(オ)605 / 裁判年月日: 昭和46年5月20日 / 結論: 棄却
債権担保のためになされた停止条件付代物弁済契約の目的たる不動産につき、債権者が停止条件成就後右不動産の所有権を取得したとしてこれを善意の第三者に譲渡して所有権移転登記を経由した以上、たとえ右債権について清算がなされていないとしても、債務者は第三者から右不動産を取り戻すことができないと解するのが相当である。
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
事件番号: 昭和43(オ)343 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: その他
一、債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使した場合であつても、目的不動産の換価処分または評価清算前に債務の弁済があつたときは、債務者に対し、右仮登記の抹消登記手続をしなけ…
事件番号: 昭和31(オ)376 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者間において、一定の債務を履行しないときに他の給付をもって弁済に充てる旨の合意がなされた場合、それが代物弁済の予約ではなく、停止条件付代物弁済の契約として成立することを肯定した。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間で、ある債務の弁済に関連して、本件物件を代物弁済に充てる旨の契約が締結された…