判旨
当事者間において、一定の債務を履行しないときに他の給付をもって弁済に充てる旨の合意がなされた場合、それが代物弁済の予約ではなく、停止条件付代物弁済の契約として成立することを肯定した。
問題の所在(論点)
債務不履行を条件として不動産等の所有権を移転させる合意がなされた場合、それが「代物弁済の予約」にとどまるのか、それとも「停止条件付代物弁済契約(本契約)」として成立し得るのか。
規範
債務者が本来の給付に代えて他の給付をなすことを約する場合、その性質が予約(完結権の行使を要するもの)か、あるいは特定の事実(債務不履行等)を条件とする停止条件付代物弁済契約かは、当事者の意思表示の解釈による。後者の場合、条件が成就した時点で直ちに代物弁済としての効力(所有権移転等)が生じることとなる。
重要事実
上告人と相手方との間で、ある債務の弁済に関連して、本件物件を代物弁済に充てる旨の契約が締結された。上告人は、この合意が「停止条件付代物弁済の予約」であると主張し、予約完結権の行使などのプロセスを前提とした判例違反や法令違反を訴えて上告した。しかし、原審(控訴審)は、証拠に基づき、本件合意の内容を「停止条件付代物弁済の本契約」であると認定していた。
あてはめ
本件において、原審は挙示の証拠に照らし、当事者間に成立したのは予約ではなく、停止条件が成就した際に直ちに効力を生ずる「停止条件付代物弁済の本契約」であると認定した。最高裁はこの事実認定を適法なものとして是認し、上告人が主張する「予約」であることを前提とした判例違反等の主張は、前提を欠くものとして退けられる。したがって、条件成就により本契約に基づく効力が発生していると解される。
結論
本件合意を停止条件付代物弁済の本契約と認定した原判決は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、借入れの担保として不動産等の所有権を移転させる約束をする際、それが予約完結権の行使を要する「予約」か、条件成就で当然に移転する「停止条件付契約」かは、契約書の文言や当事者の合理的意思により判断される。答案上では、不動産譲渡担保や代物弁済予約の成否が問題となる場面で、法的性質を決定するための意思解釈の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…
事件番号: 昭和39(オ)277 / 裁判年月日: 昭和40年4月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。
事件番号: 昭和35(オ)276 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、建…
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…