抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。
抵当権設定契約とともになされた停止条件付代物弁済契約の解釈。
民法482条
判旨
抵当権設定と併設して、債務不履行を停止条件とする代物弁済契約が締結された場合、これを当然に代物弁済の予約と解する必要はなく、条件成就により所有権が当然に移転する代物弁済の本契約として認めることができる。
問題の所在(論点)
抵当権設定と同時に停止条件付所有権移転請求権保全仮登記がなされた場合において、当該合意を代物弁済の「予約」と解すべきか、それとも「停止条件付代物弁済契約(本契約)」と解すべきか。
規範
不動産に対し抵当権設定登記と停止条件付所有権移転請求権保全仮登記が併存する場合であっても、当事者の合意が「債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約」を締結する趣旨であることが明白であるときは、これを代物弁済の予約と解釈し直す必要はなく、停止条件の成就によって所有権移転の効力が生じる。債権者が抵当権実行か代物弁済予約完結かを選択できるとする法理は、当事者の意思表示が明確を欠く場合に限定される。
重要事実
債権者(被上告人)は債務者(上告人)に対し、本件不動産について抵当権設定登記を行うと同時に、停止条件付所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。この合意の内容は、債務不履行を停止条件として本件不動産をもって代物弁済に充てるという「本契約」の締結であった。しかし債務者は、抵当権と併存する仮登記は代物弁済の「予約」と解すべきであり、債権者が予約完結の意思表示をしない限り所有権は移転しないと主張して争った。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
あてはめ
本件において、抵当権設定と併存して債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨であったことは、当事者間に争いのない事実として確定されている。当事者の意思表示が「本契約」である以上、これを「予約」と認定する根拠はない。また、所論の「抵当権実行と予約完結の選択を認めるべき」との判例法理は、意思表示が不明確な場合に限定して適用されるものであり、本件のように本契約としての合意が明確な場合には適用されない。したがって、条件成就により所有権は当然に移転する。
結論
本件合意は代物弁済の本契約であり、予約と解する必要はない。停止条件の成就により不動産の所有権は被上告人に帰属するため、上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
抵当権と代物弁済予約の併用事案において、当事者の意思解釈が問題となる際の限界を示す。清算義務を課す仮登記担保法制定前の判例であるが、現在でも当事者の合意が「予約」か「停止条件付契約」かの認定における基本的な視点として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)376 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者間において、一定の債務を履行しないときに他の給付をもって弁済に充てる旨の合意がなされた場合、それが代物弁済の予約ではなく、停止条件付代物弁済の契約として成立することを肯定した。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間で、ある債務の弁済に関連して、本件物件を代物弁済に充てる旨の契約が締結された…
事件番号: 昭和40(オ)1110 / 裁判年月日: 昭和43年2月29日 / 結論: 棄却
貸金債権担保のため不動産に抵当権が設定され、あわせて同一債権保全のため右不動産について代物弁済の予約が締結された場合において、右抵当権の実行による競売手続が開始したときは、右競売手続が競売申立の取下その他の事由により終了しないかぎり、債権者が代物弁済の予約の完結権を行使することは許されない。