一、債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使した場合であつても、目的不動産の換価処分または評価清算前に債務の弁済があつたときは、債務者に対し、右仮登記の抹消登記手続をしなければならない。 二、代物弁済予約形式の債権担保契約においては、債権者は、予約完結後目的不動産を換価処分または評価清算して優先弁済をうるため、債務者に対し、その所有権移転登記ないし引渡を請求することができるが、右請求に対し、債務者が、右不動産の価額から債権額を控除した残額を清算金としてその支払と引換えに履行をなすべき旨を主張したときは、債権者の右請求は、原則として、債務者への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である。
一、代物弁済予約形式の債権担保契約につき予約完結後清算前になされた債務弁済の効カ 二、代物弁済予約形式の債権担保契約における債権者の清算義務と債務者の本登記手続義務ないし引渡義務との関係
民法482条,不動産登記法7条,不動産登記法105条
判旨
債権担保を目的とする代物弁済予約においては、予約完結後であっても清算完了前であれば、債務者が債務を弁済することで担保契約を消滅させ、仮登記の抹消を請求できる。また、債権者による登記・引渡請求に対し、債務者は清算金の支払との引換履行を主張し得る。
問題の所在(論点)
債権担保目的の代物弁済予約において、予約完結権が行使された後の債務者の弁済による担保消滅の可否、および債権者の引渡請求に対する清算金支払との引換履行の可否が問題となる。
規範
債権担保を目的とする代物弁済予約の予約完結権行使により移転する権利は、確定的な所有権ではなく、優先弁済を受けるための清算処分権にすぎない。したがって、①換価処分または評価清算前であれば、債務者が債務を弁済することにより担保契約は消滅する。また、②債権者が目的物の所有権移転登記や引渡を求める場合、債務者が清算金の支払との引換履行を主張したときは、原則として債権者はこれに応じなければならない。
事件番号: 昭和43(オ)489 / 裁判年月日: 昭和44年10月16日 / 結論: 破棄差戻
一、不動産に関する代物弁済の予約につき請求権保全の仮登記が経由されている場合においては、該不動産の所有権が第三者に移転したときであつても、代物弁済予約権者は、予約の相手方に対して予約完結の意思表示をすべきである。 二、貸金債権担保のため同一不動産につき代物弁済の予約とともに抵当権の設定があり、その抵当権が転抵当に供され…
重要事実
債務者A1は、債権者Dとの訴訟上の和解において、金銭債務の不履行を停止条件とする本件土地建物の代物弁済予約をし、仮登記を経由した。A1が期限内に支払わなかったため、Dから債権譲渡を受けた被上告人Xが予約完結権を行使し、A1に対し所有権移転登記と明渡し等を求めて提訴した。これに対しA1は、債務の完済を条件に仮登記の抹消を求める反訴を提起した。
あてはめ
本件代物弁済予約は実質的に担保権と同視すべきものである。予約完結権が行使されたとしても、Xが取得したのは清算処分権にすぎず、確定的な所有権ではない。したがって、評価清算が行われる前であれば、A1は債務を弁済して仮登記の抹消を請求できる(①)。また、A1がXの権利の実体を担保権であると争っている以上、裁判所は清算金支払との引換履行の主張の有無につき適切に釈明権を行使すべきであった(②)。
結論
予約完結後でも、清算前であれば債務弁済による担保消滅が認められ、また清算金との引換履行を主張できる。これらを認めず、直ちに確定的な所有権移転を認めた原判決は失当である。
実務上の射程
譲渡担保と同様の「清算型」の枠組みを代物弁済予約にも適用した判例である。答案上は、仮登記担保法が適用されない事案(不動産以外の担保や、同法施行前の事案等)において、私的実行の適正化を図る法理として引用する。債務者の受戻権の終期と、引換履行の抗弁の構成が実務上のポイントとなる。
事件番号: 昭和41(オ)602 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 破棄差戻
一、判示の事情により、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに、乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合において、右両不動産の価額と弁済期までの債務元利金額とが合理的均衡を失するときは、債権者は、特別な事情のないかぎり、右両不動産を換価処分してこれによつて得…
事件番号: 昭和24(オ)201 / 裁判年月日: 昭和25年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が弁済期に債務を履行しない場合に、担保物件の所有権を直ちに債権者に帰属させ、物件を明け渡す旨の合意(代物弁済予約)は、特段の事情がない限り有効である。書面上「売渡担保」との記載があっても、当事者の真意が代物弁済予約にあると認められる場合には、その合意に従った効力が認められる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
事件番号: 昭和45(オ)731 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
清算型代物弁済予約の予約権者が、登記簿上利害関係を有する後順位債権者に対して本登記の承諾を求める場合には、右予約権者は、それらの者の債権額および優先順位に応じて清算金を同人らに交付すべき義務があり、同人らは、その交付を受けるのと引換えにのみ右承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきである。