清算型代物弁済予約の予約権者が、登記簿上利害関係を有する後順位債権者に対して本登記の承諾を求める場合には、右予約権者は、それらの者の債権額および優先順位に応じて清算金を同人らに交付すべき義務があり、同人らは、その交付を受けるのと引換えにのみ右承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきである。
清算型代物弁済予約の予約権者の後順位債権者に対する清算金の交付と右後順位者の本登記承諾義務との関係
民法482条,民法533条,不動産登記法7条,不動産登記法105条,不動産登記法146条
判旨
債権担保目的の代物弁済予約に基づく本登記請求に対し、後順位債権者は、予約権者から清算金の支払を受けるのと引換えにのみ承諾義務を履行すべき旨の同時履行の抗弁を主張できる。予約権者は、利害関係人の順位に応じて清算金を交付する義務を負い、後順位債権者は自己に支払われるべき清算金の範囲で承諾を拒絶できる。
問題の所在(論点)
不動産を債権担保に供する代物弁済予約において、予約権者が仮登記に基づく本登記手続の承諾(不動産登記法上の利害関係人の承諾)を後順位債権者に求める際、後順位債権者は清算金の支払との同時履行を主張して承諾を拒むことができるか。
規範
債権担保を目的とする代物弁済予約において、予約権者が登記上の利害関係人(後順位抵当権者等、目的物の交換価値から優先弁済を受ける地位にある「後順位債権者」)に対し、仮登記に基づく本登記への承諾を求める場合、予約権者はこれら利害関係人の地位に応じて清算金を交付する義務を負う。したがって、当該利害関係人は、自らが受け取るべき清算金の支払と引換えにのみ承諾義務を履行すべき旨を主張できる。
重要事実
債務者Dは、E信用組合からの借入金700万円を担保するため、本件不動産に代物弁済予約を締結し、仮登記を経由した。その後、上告人もDに対する貸金債権担保のため、同不動産に後順位の代物弁済予約等を締結した。被上告人は、E組合から本件債権および予約上の地位を譲り受け、Dに対し予約完結の意思表示を行い、仮登記に基づく本登記手続を求めた。これに対し、後順位者である上告人は、不動産評価額と被上告人の債権額の差額(清算金)から、自己の債権額に達するまでの支払を受けるまで、本登記の承諾を拒絶すると主張した。
事件番号: 昭和44(オ)175 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄差戻
代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、予約完結権を行使したうえ、担保目的実現の手段として本登記をするため、登記上利害関係を有する後順位抵当権者その他目的不動産から優先弁済を受ける地位を有する債権者および目的不動産の第三取得者に対し、その承諾を訴求する場合…
あてはめ
本件の代物弁済予約は、目的不動産を換価処分して優先弁済を受け、残額を債務者に返還する性質の債権担保契約である。上告人は、予約権者である被上告人の仮登記よりも後に権利を取得した「後順位債権者」に該当する。このような後順位債権者は、不動産の交換価値から優先弁済を受ける権利を有しており、清算金の分配に利害関係を有する。したがって、被上告人が上告人より先順位の債権者へ清算金を支払った後に残額があるならば、上告人はその残額から自己の債権額に相当する金員の直接支払を求めることができ、その支払と承諾義務は引換関係に立つと解される。
結論
上告人は、支払を受けるべき清算金の支払と引換えにのみ本登記承諾義務の履行をすべきと主張できる。これに反して同時履行の抗弁を排斥した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、清算金支払と本登記承諾義務の同時履行を認める法理は、現在の仮登記担保法における清算手続(同法13条等)の解釈や、同法が適用されない譲渡担保等の清算実務においても、後順位権利者の保護を図るための重要な枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和33(オ)734 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 破棄差戻
金融業者が、金二〇万円を、弁済期一ケ月後、利息一ケ月九分の約で貸し付けるにあたり、借主が右債務の支払を怠つたときは、貸主はその支払にかえて時価八〇万円を下らない不動産の所有権を取得することができる旨代物返済の予約をした場合であつても、貸主が、巨利を博すべくはじめから右不動産を処分する意図をもつて、借主側の窮迫、無経験な…
事件番号: 昭和25(オ)132 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約において、債権者が任意に本来の給付の履行を請求するか代物弁済を受けるかを選択できる性質の契約である場合、債務者の供託による弁済の効力は、従前の債務不履行の有無に左右されない。 第1 事案の概要:債権者(上告人)と債務者(被上告人)との間で、金銭債務の弁済に代えて不動産を譲渡する旨の約…
事件番号: 昭和39(オ)277 / 裁判年月日: 昭和40年4月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。
事件番号: 昭和39(オ)1481 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権担保のため抵当権設定と共に代物弁済予約がなされた場合、元本の一部弁済があっても残債務がある限り予約は失効せず、完結権の行使は有効である。また、予約に基づく仮登記がある場合でも、債権者は仮登記の本登記手続によらず、直接代物弁済を原因とする所有権移転登記を請求できる。 第1 事案の概要:被上告人は…