判旨
代物弁済の予約において、債権者が任意に本来の給付の履行を請求するか代物弁済を受けるかを選択できる性質の契約である場合、債務者の供託による弁済の効力は、従前の債務不履行の有無に左右されない。
問題の所在(論点)
債務不履行を停止条件とする代物弁済契約ではなく、債権者に選択権がある「予約」と解される場合において、有効な弁済の提供(供託)が認められるために、事前の債務不履行の有無を判断する必要があるか。
規範
代物弁済の予約が、債務不履行を停止条件として自動的に所有権が移転するものではなく、債権者が本来の債権を行使するか代物弁済を受けるかを任意に選択できる旨の合意である場合、有効な弁済の提供(供託)がなされれば、その効力は債務不履行の事実の有無に関わらず認められる。
重要事実
債権者(上告人)と債務者(被上告人)との間で、金銭債務の弁済に代えて不動産を譲渡する旨の約定がなされた。債権者は、これが債務不履行を停止条件とする代物弁済契約であり、既に条件は成就したと主張した。一方、債務者は、残元利金を供託し債務の消滅を主張した。原審は、当該約定を「債権者が任意に本来の債権を行使するか代物弁済を受け得る旨の予約」と認定した上で、債務者による現実の提供および受領拒絶後の供託を有効と認めた。
あてはめ
本件における約定は、特定の不履行により当然に代物弁済が完結するものではなく、債権者が選択的に権利を行使できる性質の予約である。この場合、債務者が本来の給付について制限利息内の元利金を現実に提供し、受領を拒絶されたためになした供託は、有効な弁済として認められる。債権者に選択権が留保されている以上、過去に債務不履行があったか否かは、債務消滅を目的とする供託の効力を左右するものではない。
結論
債務者による元利金の供託は有効であり、債務不履行の存否に関する判断を欠いたとしても、原判決の結論に影響を及ぼす違法はない。
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
実務上の射程
代物弁済予約の法的性質が「停止条件付」か「債権者の選択権留保型」かによって、弁済(供託)の有効性や不履行の意義が異なることを示す。答案上、予約完結権の行使や供託の有効性を論じる際の認定の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和45(オ)731 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
清算型代物弁済予約の予約権者が、登記簿上利害関係を有する後順位債権者に対して本登記の承諾を求める場合には、右予約権者は、それらの者の債権額および優先順位に応じて清算金を同人らに交付すべき義務があり、同人らは、その交付を受けるのと引換えにのみ右承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきである。
事件番号: 昭和49(オ)1202 / 裁判年月日: 昭和50年12月26日 / 結論: 棄却
土地の買主が、所有権移転登記をうけなかつたが申請手続の過誤により隣地につき所有権移転登記がされたためであり、土地の引渡はうけその使用をつづけた等判示の事実関係のもとにおいては、買受代金の支払について所有権移転登記手続との同時履行を主張することは信義則上許されない。
事件番号: 昭和42(オ)1472 / 裁判年月日: 昭和44年2月13日 / 結論: 破棄差戻
一個の債権担保のため、甲乙丙不動産につき停止条件付代物弁済契約がされるとともに、所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合において、債権者が甲不動産を代物弁済により所有権を取得し、それに基づいて所有権移転登記を経由したにすぎないときは、その後乙不動産につき所有権移転請求権保全の請求権を譲り受けた者がした代物弁済による…
事件番号: 昭和33(オ)705 / 裁判年月日: 昭和36年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買代金の支払方法に関する契約において、買主が残代金の大部分を期日に弁済しなかったことにより、担保の目的物たる山林の所有権が確定的に売主に帰属するとした原審の判断を適法として維持した。 第1 事案の概要:上告人(買主)と被上告人(売主)は、土地の売買契約を締結したが、その代金支払方法について、残代…