判旨
売買代金の支払方法に関する契約において、買主が残代金の大部分を期日に弁済しなかったことにより、担保の目的物たる山林の所有権が確定的に売主に帰属するとした原審の判断を適法として維持した。
問題の所在(論点)
売買代金の未払を理由に、担保物件の所有権が債権者に確定的に帰属するという契約条項の効力、およびそれが暴利行為等として公序良俗に反するか。
規範
債務不履行を停止条件(または解除条件)とする所有権移転の合意がある場合において、特段の無思慮・急迫に乗じた不当な利益の享受といった公序良俗違反等の事情がない限り、契約上の定めに従い所有権の帰属が確定する。
重要事実
上告人(買主)と被上告人(売主)は、土地の売買契約を締結したが、その代金支払方法について、残代金6万8千円の大部分を期日までに支払わなかった場合には、本件山林の所有権が確定的に被上告人に帰属する旨の合意をしていた。実際、上告人は期日に残代金の大部分を支払わなかった。
あてはめ
上告人は、わずか1千円の不足によって所有権の復帰が認められなかったかのように主張するが、実際には残代金6万8千円の「大部分」を支払っていない。また、本件の事実関係の下では、上告人の無思慮・急迫に乗じて被上告人が不当な利益を貪った(暴利行為)とは解し難い。したがって、契約上の定めに基づき、本件山林の所有権は確定的に被上告人に帰属する。
結論
本件山林の所有権は被上告人に確定的に帰属しており、上告人の上告は棄却される。
実務上の射程
譲渡担保や流質予約に近い合意の有効性に関する判断事例である。債務不履行時に目的物の所有権を確定的に移転させる合意も原則として有効であるが、公序良俗違反(民法90条)や暴利行為に該当する場合には無効となり得ることを示唆している。ただし、本件のように不履行の程度が著しい場合には、契約どおりの効果が認められる。
事件番号: 昭和33(オ)76 / 裁判年月日: 昭和35年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約において残代金の支払期日を徒過した際に「当然に契約解除となる」旨の約款が存在する場合であっても、特段の事情がない限り、直ちに無催告で解除の効果が発生するものではないと解するのが相当である。 第1 事案の概要:本件では、売買契約の当事者間で残代金の支払期日が定められ、当該期日を徒過した場合に…
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和33(オ)992 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約に基づく所有権移転が、不動産価格と債務額に大きな差がある場合でも、相手方の窮迫等を利用して過当な利益を図る目的がない限り、直ちに公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人から37万円を借り受け、利息制限法に基づく引き直し後の元本債務は38万1100円であっ…
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。