判旨
売買契約において残代金の支払期日を徒過した際に「当然に契約解除となる」旨の約款が存在する場合であっても、特段の事情がない限り、直ちに無催告で解除の効果が発生するものではないと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
売買契約における残代金支払義務の不履行を解除事由とする失権約款について、履行期の徒過という事実のみによって催告や解除の意思表示を要せず当然に解除の効果が発生するか。当該約款の解釈が問題となる。
規範
契約書中の「支払期日の徒過により当然に契約解除となる」旨の条項(失権約款)の解釈において、債務不履行の事実のみをもって直ちに解除の効果を発生させることは、当事者の合理的意思や契約の安定性に鑑み、限定的に解釈すべきである。
重要事実
本件では、売買契約の当事者間で残代金の支払期日が定められ、当該期日を徒過した場合には契約が当然に解除される旨の約款が付されていた。買主が支払期日を残代金の支払なしに経過させたため、売主側は当該約款に基づき契約が当然に失効したと主張した。
あてはめ
本件約款は、残代金の支払期の徒過により契約が当然解除となることを約した趣旨とは認められない。すなわち、債務者が履行遅滞に陥った事実をもって、直ちに債権者の意思表示を待たずして契約関係を消滅させる合意があったとはいえない。債権者が解除の意思を決定し、必要な手続を経ることを予定していると解するのが相当である。
結論
本件約款の存在のみをもって契約が当然に解除されたとは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
契約解除に関する失権約款(特に不動産売買等)の解釈において、債権者に有利な「自動解除」を認めるには厳格な意思表示の解釈が必要であることを示している。司法試験においては、特約の解釈として「当然に解除される」という文言があっても、原則として催告が必要な「解除権の留保」にすぎないと解釈する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)1067 / 裁判年月日: 昭和36年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買において、買主が猶予期限までに残代金を支払わないときは、売主の登記義務の履行を待たずに契約を解除する旨の特約(失権約款)がある場合、その期限の経過により契約は当然に解除される。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(被上告人)と買主(上告人)との間で、残代金の支払について猶予…
事件番号: 昭和33(オ)705 / 裁判年月日: 昭和36年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買代金の支払方法に関する契約において、買主が残代金の大部分を期日に弁済しなかったことにより、担保の目的物たる山林の所有権が確定的に売主に帰属するとした原審の判断を適法として維持した。 第1 事案の概要:上告人(買主)と被上告人(売主)は、土地の売買契約を締結したが、その代金支払方法について、残代…
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
事件番号: 昭和44(オ)330 / 裁判年月日: 昭和44年8月29日 / 結論: 棄却
商人間の土地の売買において、当事者の意思表示により、一定の日時または一定の期間内に履行をなさなければ、契約をした目的を達することができないときは、その売買は確定期売買と解すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。