債権の一部弁済がなされた後でも代物弁済予約完結権行使ができるとされた事例
判旨
債権担保のため抵当権設定と共に代物弁済予約がなされた場合、元本の一部弁済があっても残債務がある限り予約は失効せず、完結権の行使は有効である。また、予約に基づく仮登記がある場合でも、債権者は仮登記の本登記手続によらず、直接代物弁済を原因とする所有権移転登記を請求できる。
問題の所在(論点)
1. 被担保債権の元本の一部が弁済された場合、代物弁済予約は失効するか。2. 所有権移転請求権保全の仮登記がなされている場合、直接「代物弁済」を原因とする所有権移転登記を請求できるか。
規範
1. 債権担保を目的とする代物弁済予約において、被担保債権の元本の一部に弁済があったとしても、残債務が存在する限り、特段の事情がない限り予約の効力は失効せず、完結権の行使を妨げない。2. 代物弁済予約に基づき所有権移転請求権保全の仮登記がなされている場合であっても、完結権行使により所有権を取得した債権者は、当該仮登記の本登記手続を経ることなく、直接代物弁済を登記原因とする所有権移転登記を請求することが可能である。
重要事実
被上告人は、訴外Dに対する貸金700万円および利息債権を担保するため、上告人との間で本件土地について代物弁済予約を締結した。その後、Dは元本の内入として50万円、および利息の一部として約30万円を弁済したが、依然として元本650万円および約定利息の債権が残存していた。被上告人は予約完結の意思表示を行い、本件土地の所有権移転登記を求めたが、債務者は一部弁済による予約の失効および登記手続の不備(仮登記の本登記によるべき点)を主張して争った。
あてはめ
1. 本件では、当初の貸金700万円のうち50万円の元本内入があったものの、依然として650万円の元本および利息債務が残存している。このように債権の一部が消滅しても、担保の性質上、残債務を担保する範囲で予約の効力は存続すると解すべきであり、完結権の行使は有効と認められる。2. 予約完結権の行使により、被上告人は法律上当然に土地の所有権を取得したといえる。仮登記が存在することは、実体法上の権利取得に基づく登記請求を制限するものではなく、手続の選択として直接の移転登記請求も許容される。
事件番号: 昭和39(オ)1367 / 裁判年月日: 昭和40年12月3日 / 結論: 棄却
一 債権担保の機能を営む代物弁済の予約がされた後、被担保債権の一部が弁済されても、反対の特約または権利の濫用と認められるような特段の事由がないかぎり、当該予約完結権の行使は妨げられない。 二 前項の場合において、予約完結権を行使した債権者は、特段の事情がないかぎり、一部弁済としてすでに受領した金員を債務者に返還する義務…
結論
1. 残債務がある以上、予約は失効せず完結権行使は有効である。2. 仮登記の本登記手続によらず、直接所有権移転登記を請求できる。
実務上の射程
代物弁済予約による担保実務(譲渡担保等への準用)において、一部弁済による担保権の不可分性を確認した判例。登記手続面では、仮登記経由後であっても、登記実務上の簡便な手法を選択できる余地を認めており、訴訟上の請求構成を検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和39(オ)277 / 裁判年月日: 昭和40年4月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。
事件番号: 昭和42(オ)359 / 裁判年月日: 昭和42年6月23日 / 結論: 棄却
滞納処分により差押えられている不動産の目的として代物弁済の予約がされても、予約当事者間においては有効である。
事件番号: 昭和45(オ)731 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
清算型代物弁済予約の予約権者が、登記簿上利害関係を有する後順位債権者に対して本登記の承諾を求める場合には、右予約権者は、それらの者の債権額および優先順位に応じて清算金を同人らに交付すべき義務があり、同人らは、その交付を受けるのと引換えにのみ右承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきである。