滞納処分により差押えられている不動産の目的として代物弁済の予約がされても、予約当事者間においては有効である。
差押にかかる不動産を目的とした代物弁済予約の効力
民法482条,民訴法644条
判旨
滞納処分による差押え後に締結された代物弁済予約は当事者間では有効であり、その完結権行使に際して債務者への催告は不要である。
問題の所在(論点)
1. 滞納処分による差押え後に締結された代物弁済予約の当事者間における有効性。 2. 予約完結権の行使にあたって、前提として弁済の催告が必要か。また、催告なしに完結権を行使することが権利の濫用にあたるか。
規範
1. 滞納処分による差押えがなされた不動産について、その後に締結された代物弁済予約は、国等の差押債権者に対抗できないとしても、予約の当事者間においては有効に成立する。 2. 代物弁済の予約完結権は形成権であり、特段の事情がない限り、その行使に際して事前の弁済催告を要しない。また、完結権の行使が直ちに権利の濫用(民法1条3項)に該当することはない。
重要事実
対象不動産に対し、公租公課の滞納処分に基づく差押えが既になされていた。その差押えの後に、権利者(上告人)と義務者との間で本件代物弁済予約が締結された。その後、予約完結権が行使されたが、これに対し、差押え後の予約であるから無効である、または行使に際して弁済の催告が必要であり、催告なき行使は権利の濫用であるとして、その効力が争われた。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。
あてはめ
1. 差押えの効力は処分を制限するものであるが、それは差押債権者との関係で相対的に生じるものであり、予約当事者間での合意を直ちに無効とするものではない。したがって、本件代物弁済予約は当事者間では正当に効力を有する。 2. 予約完結権の性質上、権利者の意思表示のみによって効力が生じるため、特段の事情がない限り弁済の催告は不要である。本件において上告人が主張する諸事情(詳細は判決文からは不明)を考慮しても、催告を欠いたことをもって権利の濫用と評価するには足りない。
結論
本件代物弁済予約は有効であり、催告なしの完結権行使も適法である。したがって、上告人の請求(または主張)は認められない。
実務上の射程
差押え後の処分行為の相対的効力を再確認する。答案上は、代物弁済予約や譲渡担保の有効性を論じる際、差押えや仮差押えとの前後関係が問題となる場面で、当事者間の債権的効力を肯定する根拠として活用できる。また、予約完結権行使の要件に催告が含まれないという原則論の引用にも適している。
事件番号: 昭和42(オ)1239 / 裁判年月日: 昭和43年3月8日 / 結論: 棄却
将来の債権のため根担保の意味で順次二口の代物弁済予約が締結され、その際予約完結時において消滅させるべき債権額についてなんらの合意がされていない等原判示の事情(原判決理由参照)のもとにおいては、当事者は予約完結権の行使後目的物件を換価または評価してその金額を債権の弁済に充当し、過不足があればその清算をする意思を有するもの…
事件番号: 昭和39(オ)277 / 裁判年月日: 昭和40年4月16日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約と併存的に債務不履行を停止条件とする代物弁済の本契約を締結する趣旨が当事者の意思表示条明確である場合には、これを代物弁済の予約と解しなければならないことはない。
事件番号: 昭和39(オ)1481 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債権担保のため抵当権設定と共に代物弁済予約がなされた場合、元本の一部弁済があっても残債務がある限り予約は失効せず、完結権の行使は有効である。また、予約に基づく仮登記がある場合でも、債権者は仮登記の本登記手続によらず、直接代物弁済を原因とする所有権移転登記を請求できる。 第1 事案の概要:被上告人は…
事件番号: 昭和45(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和46年5月25日 / 結論: 棄却
売買一方の予約において予約完結権を行使するには、代金を提供する必要はないと解するのが相当である。