一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その権利(いわゆる仮登記担保権)の内容は、当事者が別段の意思を表示し、かつ、それが諸般の事情に照らして合理的と認められる特別の場合を除いては、債務者に履行遅滞があつた場合に権利者が予約完結の意思を表示し、又は停止条件が成就したときは、権利者において目的不動産を処分する権能を取得し、これに基づいて、当該不動産を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめること又は相当の価格で第三者に売却等をすることによつて、これを換価処分し、その評価額又は売却代金等から自己の債権の弁済を得ることにあり、右評価額又は売却代金等の額が権利者の債権額を超えるときは、権利者は、右超過額を清算金として債務者に交付すべきものであると解するのが粗当である。 二、いわゆる仮登記担保権者が目的不動産の換価金につき清算義務を負うのは、債務者又は仮登記後に目的不動産の所有権を取得してその登記を経由した第三者に対してのみであつて、仮登記後に目的不動産を差し押えた債権者、これにつき抵当権の設定を受けた第三者等に対しては、仮登記担保権者は、直接の清算義務を負わない。 三、いわゆる仮登記担保権者は、民訴法六四八条四号又は競売法二七条四項四号に基づき、当該権利が仮登記担保権であること及び被担保債権とその金額を明らかにして競売裁判所に届け出る方法により、目的不動産の競売手続に参加して配当を受けることができる。 四、いわゆる仮登記担保権者がその権利の実行として訴訟により仮登記の本登記手続又はその承諾を請求する前に既に第三者の申立により目的不動産につき競売手続が開始されている場合には、右の請求をすることは、原則として許されない。 (二につき補足意見がある。)
一、金銭債権担保のため不動産について代物弁済予約又は売買予約等の形式をとる契約が締結され所有権移転請求権保全等の仮登記がされた場合における右契約の性質及び内容 二、いわゆる仮登記担保権者が清算義務を負う相手方 三、いわゆる仮登記担保権と競売手続との関係 四、いわゆる仮登記担保権の目的不動産に対し競売手続が開始されている場合における仮登記担保権者の仮登記の本登記手続又はその承諾請求の許否
民法369条,民法482条,民法556条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項,不動産登記法105条,不動産登記法146条,民訴法648条,競売法27条
判旨
仮登記担保権者は、清算義務を負うが、後順位債権者に対し直接清算金を支払う義務はなく、先行する競売手続がある場合は、特段の事情がない限り、当該競売手続に参加して優先弁済を受けるべきである。
問題の所在(論点)
仮登記担保権の実行として後順位債権者に承諾を求める際、後順位債権者に対する直接の清算金支払義務(引換給付)が認められるか。また、先行する強制競売手続がある場合に、仮登記担保権者は独自の実行手続を追行できるか。
事件番号: 昭和40(オ)1110 / 裁判年月日: 昭和43年2月29日 / 結論: 棄却
貸金債権担保のため不動産に抵当権が設定され、あわせて同一債権保全のため右不動産について代物弁済の予約が締結された場合において、右抵当権の実行による競売手続が開始したときは、右競売手続が競売申立の取下その他の事由により終了しないかぎり、債権者が代物弁済の予約の完結権を行使することは許されない。
規範
1. 仮登記担保の性質は、目的物の換価による債権の排他的満足にあり、債権者は帰属清算または処分清算により清算金を支払う義務を負う。2. 清算金の支払相手方は債務者等に限られ、後順位債権者は債権者代位権等によるほか、本登記請求に対し債務者への清算金支払との引換給付を主張できるにとどまる。3. 先行する競売手続がある場合、仮登記担保権者は原則として同手続に参加すべきであり、自己の権利実行を優先できるのは、競売開始前に実行に着手していた場合や、迅速な満足が得られない等の正当な法的利益がある場合に限られる。
重要事実
上告人らは債務者Dとの間で、借入金債務の担保として本件建物に停止条件付代物弁済契約を締結し、所有権移転仮登記を経由した。その後、後順位債権者である被上告人B1が強制競売を申し立て、B2が抵当権を設定した。上告人らは、Dに対し本登記請求訴訟を提起して勝訴した後、利害関係人である被上告人らに対し、不動産登記法に基づき本登記への承諾を求めた。
あてはめ
後順位債権者は仮登記担保権者と直接の清算関係に立たず、競売外の換価において直接支払を請求する根拠はないため、引換給付の抗弁は債務者への支払を条件とする範囲でしか認められない。また、本件ではB1による競売手続が先行している可能性があり、上告人らが競売開始前に実行に着手したか、あるいは競売手続によらず独自の実行を認めるべき特段の事情(正当な法的利益)があるかについて審理が尽くされていない。
結論
仮登記担保権者は後順位債権者に直接清算金を支払う必要はない。先行する競売手続がある場合、原則として競売に参加すべきであるが、実行着手の先後や正当な法的利益の有無により独自の実行が認められ得るため、これらを審理させるべく原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の大法廷判決であり、現在の同法13条(競売による消滅)や15条(優先弁済権)の解釈指針となっている。答案上は、仮登記担保の私的実行と公的競売の調整、および後順位債権者の保護の枠組みとして重要である。
事件番号: 昭和49(オ)1087 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: その他
仮登記担保権者が目的不動産を自己の所有に帰属させるとの意思表示をしただけで清算をしないで仮登記のまま目的不動産を第三者に譲渡し、第三者が本登記を経た場合において、本登記が債務者の意思に基づかずにされたときは、債務者は第三者に対して右本登記の抹消手続を請求することができる。
事件番号: 昭和47(オ)723 / 裁判年月日: 昭和50年11月21日 / 結論: 棄却
物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
事件番号: 昭和35(オ)1299 / 裁判年月日: 昭和38年10月8日 / 結論: その他
建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。