一、貸金債権担保のため、不動産につき売買予約の形式をとる契約が締結された場合には、右契約は、代物弁済の形式をとる債権担保のための契約がその実質において担保権と同視されるべきものであるのと同様に、債務者が弁済期に債務の弁済をしないとき、目的不動産の所有権を移転させる方式によつて債権の優先弁済を受けることを目的とするものであつて、債権者において、予め定められた目的不動産の適正な評価額に相当する売買代金額、または該不動産を適正な時価によつて評価した価額から、債権額を差し引いた残額を、清算金として、債務者に支払うことを要する趣旨の債権担保契約と解するのが相当である。 二、前項の内容を有する債権担保契約につき所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、担保目的実現の手段として目的不動産につき本登記をするため、登記上利害関係を有する第三者に対し、その承諾を求める訴を提起した場合において、第三者が抵当権者その他自己の債権につき目的不動産から優先弁済を受けうる地位を取得した者であるときは、右第三者は、該訴訟の事実審の口頭弁論終結時における評価による目的不動産の価額から債権者の有する債権額を差し引いた残額につき、債務者に優先して、自己の有する債権について弁済を受けうる地位にあるものであつて、その支払と引換えにのみ本登記の承諾義務を履行すべきことを主張しうるものと解すべく、仮差押債権者も、右の第三者に準じて、その受けるべき金額の供託と引換えに右承諾義務を履行すべきことを主張しうるものと解するのが相当である。
一、債権担保のために締結された売買予約の解釈 二、売買予約の形式をとる債権担保契約につき仮登記を経由した債権者から本登記をするについての承諮を訴求された後順位利害関係人の地位
民法556条,不動産登記法7条,不動産登記法105条,不動産登記法146条,民訴法751条
判旨
債権担保目的の売買予約に基づく所有権移転請求権仮登記がなされた場合、仮登記権利者が予約完結権を行使して本登記を請求するには、目的不動産の適正評価額と債権額との差額(清算金)を支払う必要があり、後順位の仮差押債権者は清算金の供託と引換えにのみ本登記を承諾する義務を負う。
問題の所在(論点)
債権担保を目的とする売買予約の仮登記において、予約完結権の行使により本登記を請求する場合の法的性質、および後順位の仮差押債権者が本登記承諾請求を拒絶しうる正当な理由の有無。
規範
所有権移転の形式を採る担保契約(仮登記担保)は、実質的に担保権と同視すべきであり、債権者は、目的不動産の適正な時価による評価額から自己の債権額を差し引いた「清算金」を債務者に支払う義務を負う。また、登記上の利害関係人である後順位債権者は、目的不動産の交換価値のうち債権額を超過する残余部分から弁済を受ける地位を有するため、債権者からの本登記承諾請求に対し、清算金の支払(仮差押債権者の場合は供託)との引換給付の抗弁を主張しうる。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…
重要事実
債権者である被上告人は、債務者Dに対する準消費貸借上の債務を担保するため、本件建物に売買予約の仮登記を経由した。その後、上告人が本件建物に仮差押登記を経由。Dが弁済期に債務を履行しなかったため、被上告人は予約完結の意思表示を行い、上告人に対し不動産登記法上の本登記承諾請求を求めた。原審は、予約完結により被上告人が確定的に所有権を取得したとして請求を認容したが、上告人が清算金の有無や引換給付を主張する余地について審理しなかった。
あてはめ
本件売買予約は債権担保目的でなされており、実質は担保権である。そのため、被上告人が所有権を取得するには清算金の支払が不可欠である。上告人は仮差押債権者であり、将来の強制執行により弁済を受ける地位を保全していることから、後順位の抵当権者等と同様に保護されるべきである。したがって、上告人は被上告人に対し、清算金の供託と引換えにのみ本登記を承諾するとの主張をなしうるが、原審は予約完結により直ちに所有権が移転したと解しており、清算義務の有無やその内容を検討していない点で審理不尽といえる。
結論
仮登記担保の実行において、仮登記権利者は清算義務を負う。後順位の仮差押債権者は、清算金の供託と引換えにのみ本登記を承諾する義務を負うため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、譲渡担保や仮登記担保における清算義務の一般的法理として機能する。答案上は、担保権の実行としての側面を強調し、後順位者の利益保護(引換給付抗弁)の論拠として用いる。
事件番号: 昭和50(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和51年3月19日 / 結論: 棄却
一、同一不動産を目的とする後順位仮登記担保権者は、債務者のために先順位仮登記担保権者の被担保債権を弁済するにつき民法五〇〇条にいう「正当ノ利益」を有する。 二、先順位仮登記担保権者に対する代位弁済により先順位仮登記担保権者の有する抵当権及び仮登記担保権を取得した後順位仮登記担保権者は、自己の債権につき債務者に履行遅滞が…
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和55(オ)1140 / 裁判年月日: 昭和57年3月25日 / 結論: 棄却
所有権移転請求権保全の仮登記の名義人は、登記上利害関係を有する第三者の承諾書等がないため、仮登記とは無関係に所有権移転登記を経由した場合であつても、特段の事情のない限り、仮登記義務者に対して仮登記の本登記手続を請求する権利を失わず、右仮登記の本登記を承諾すべき第三者の義務も消滅しない。