所有権移転請求権保全の仮登記の名義人は、登記上利害関係を有する第三者の承諾書等がないため、仮登記とは無関係に所有権移転登記を経由した場合であつても、特段の事情のない限り、仮登記義務者に対して仮登記の本登記手続を請求する権利を失わず、右仮登記の本登記を承諾すべき第三者の義務も消滅しない。
所有権移転請求権保全の仮登記の名義人が仮登記と無関係に所有権移転登記を経由した場合と仮登記の本登記請求権及び第三者の右本登記承諾義務の帰すう
不動産登記法2条,不動産登記法7条2項,不動産登記法105条1項,不動産登記法144条,不動産登記法146条1項
判旨
所有権移転請求権保全の仮登記権利者が、仮登記とは無関係に所有権移転登記を経由しても、特段の事情がない限り、仮登記の本登記手続を請求する権利は消滅せず、仮登記を抹消する必要もない。
問題の所在(論点)
仮登記権利者が仮登記に基づかない所有権移転登記を経由した場合に、当該仮登記が混同等により消滅し、抹消されるべきか。また、第三者の本登記承諾義務は消滅するか。
規範
仮登記権利者が仮登記に基づかず別途所有権移転登記を経由した場合であっても、特段の事情がない限り、仮登記の本登記請求権は消滅せず、当該仮登記は依然として存続理由を有する。したがって、仮登記の抹消義務は生じず、登記上の利害関係を有する第三者が仮登記の本登記を承諾すべき義務も消滅しない。
重要事実
所有権移転請求権を保全するための仮登記を有していた権利者が、後に登記上の利害関係を有する第三者の承諾書等が得られない等の事情により、当該仮登記に基づく本登記としてではなく、それとは無関係な原因によって所有権移転登記を経由した。これに対し、当該仮登記の抹消や、第三者の承諾義務の存否が争われた。
事件番号: 昭和50(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和51年3月19日 / 結論: 棄却
一、同一不動産を目的とする後順位仮登記担保権者は、債務者のために先順位仮登記担保権者の被担保債権を弁済するにつき民法五〇〇条にいう「正当ノ利益」を有する。 二、先順位仮登記担保権者に対する代位弁済により先順位仮登記担保権者の有する抵当権及び仮登記担保権を取得した後順位仮登記担保権者は、自己の債権につき債務者に履行遅滞が…
あてはめ
仮登記は、将来の本登記の順位を保全する効力を有するものである。仮に仮登記権利者が別途所有権を取得したとしても、中間処分(第三者の登記)が存在する場合、仮登記に基づかない登記では対抗力において劣後する可能性がある。そのため、仮登記権利者が仮登記義務者に対して本登記手続を請求する権利を保持し、順位保全の利益を享受する必要性は依然として認められる。したがって、本件のように仮登記とは無関係に登記を経由しても「特段の事情」がない限り仮登記は存続し、第三者の承諾義務も維持されると解される。
結論
仮登記権利者は本登記請求権を失わず、仮登記を抹消する必要はない。また、第三者の本登記承諾義務も消滅しない。
実務上の射程
仮登記のある不動産につき、仮登記権利者が中間登記のある状態で所有権移転登記を具備した場合に、順位保全の利益が失われないことを論証する際に用いる。不動産登記法上の「利害関係を有する第三者」に対する承諾請求の可否を判断する重要な指針となる。
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
事件番号: 昭和47(オ)620 / 裁判年月日: 昭和49年12月24日 / 結論: 棄却
金銭債権の担保のため債務者所有の不動産に所有権移転請求権保全の仮登記をするのに代えて、他の債権者の債権担保のため所有権移転請求権保全の仮登記が被担保債権の消滅にもかかわらず残存しているのを利用して新債権者への右請求権移転の附記登記をした場合、附記登記後に右不動産につき利害関係を有するにいたつた第三者は、特別の事情のない…
事件番号: 昭和37(オ)1410 / 裁判年月日: 昭和39年2月13日 / 結論: 棄却
所有権転移仮登記の権利者が、仮登記後所有権取得登記を経た第三者に対し、右登記の抹消登記手続を請求した場合、裁判所が、仮登記に基づく本登記手続につき承諾を命ずる判決をしても、民訴法第一八六条に違反しない。