所有権転移仮登記の権利者が、仮登記後所有権取得登記を経た第三者に対し、右登記の抹消登記手続を請求した場合、裁判所が、仮登記に基づく本登記手続につき承諾を命ずる判決をしても、民訴法第一八六条に違反しない。
民訴法第一八六条に違反しない事例。
民訴法186条,不動産登記法7条,不動産登記法105条,不動産登記法146条
判旨
不動産譲渡担保において、目的物件の所有権は第三者との関係では債権者に移転しており、また仮登記の目的を達するための承諾請求は、所有権登記抹消請求の趣旨に包含され得ると判断した。
問題の所在(論点)
1. 譲渡担保契約において、第三者に対する関係で所有権は誰に帰属するか。 2. 所有権取得登記の抹消請求の中に、仮登記に基づく本登記への承諾請求が含まれると解し、これを認容することは処分権主義(民訴法246条)に反するか。
規範
1. 不動産譲渡担保契約が締結された場合、外部的関係(第三者に対する関係)においては、目的物件の所有権は債権者に移転するものと解すべきである。 2. 仮登記権利者が、仮登記の目的に抵触する第三者の登記の排除を求める際、所有権取得登記の抹消を求める請求には、その目的を達するために必要な、仮登記に基づく本登記手続への承諾を求める趣旨も包含されていると解するのが相当である(処分権主義との関係)。
重要事実
債権者Dとの間で不動産譲渡担保契約を締結した上告人らが、第三者である被上告人に対し、本件不動産の所有権が自己に帰属することを主張した。また、原審において、被上告人が所有権取得登記の抹消を求めたのに対し、裁判所が仮登記に基づく本登記手続への承諾を命じる判決をしたことが、当事者の申し立てない事項についての判決(処分権主義違反)に該当するかが争われた。
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。
あてはめ
1. 本件譲渡担保契約により、不動産の所有権は対外的な関係においては債権者Dに移転している。したがって、上告人らは第三者である被上告人に対し、所有権が自己にあることを対抗できない。 2. 仮登記制度の本旨に照らせば、仮登記に抵触する第三者登記の抹消を求めることは、仮登記に基づく権利を実効化する目的を有する。したがって、抹消登記の請求中には、同じ目的を達するために必要な承諾請求の趣旨も包含されていると認められる。これを認容しても被上告人の合理的な意思に反するものではない。
結論
1. 第三者に対する関係では、譲渡担保により所有権は債権者に移転する。 2. 所有権登記抹消請求に基づき承諾請求を認容しても、処分権主義に反する違法はない。
実務上の射程
譲渡担保の所有権移転の構成を「信託的譲渡説(所有権移転説)」の立場から肯定した初期の判例である。また、民事訴訟法上は、請求の趣旨の合理的な解釈により、形式的には異なる請求であっても実質的に包含関係にあると認められれば、処分権主義に反しないとする柔軟な解釈手法を示している。
事件番号: 昭和39(オ)1413 / 裁判年月日: 昭和40年12月14日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。
事件番号: 昭和37(オ)291 / 裁判年月日: 昭和38年9月3日 / 結論: 棄却
甲乙間の農地訴有権移転の許可申請書に添付されている農地売買契約書表示の契約年月日において甲乙間に直接売買がなされた事実はなく、真実は、前示年月日以前に甲丙間に売買契約が成立していたところ、丙の右契約にもとづく権利を乙が譲り受け、甲乙間に当該農地の所有権移転がなされるに至つた場合にあつては、申請書添付書類に右のような真実…