一、同一不動産を目的とする後順位仮登記担保権者は、債務者のために先順位仮登記担保権者の被担保債権を弁済するにつき民法五〇〇条にいう「正当ノ利益」を有する。 二、先順位仮登記担保権者に対する代位弁済により先順位仮登記担保権者の有する抵当権及び仮登記担保権を取得した後順位仮登記担保権者は、自己の債権につき債務者に履行遅滞があつたことにより代物弁済予約完結の意思表示をし、又は停止条件が成就したときは、先順位仮登記担保権者に対し、右抵当権設定登記及び仮登記の抹消登記手続を請求することができる。
一、後順位仮登記担保権者の先順位仮登記担保権者に対する債務者のためにする弁済と法定代位 二、先順位仮登記担保権者に対する代位弁済により先順位仮登記担保権者の有する抵当権及び仮登記担保権を取得した後順位仮登記担保権者の右抵当権設定登記及び仮登記抹消登記手続請求の可否
民法369条,民法482条,民法500条,民法501条,民法556条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
判旨
同一不動産の後順位仮登記担保権者は、先順位者の被担保債権を弁済するにつき「正当な利益を有する者」に当たり、代位弁済により先順位権利を承継取得した上で、その抹消を請求することができる。
問題の所在(論点)
後順位仮登記担保権者が、先順位仮登記担保権者の被担保債権を弁済するにつき民法上の「正当な利益を有する者」に含まれるか。また、弁済した者が先順位権利の抹消を請求できるか。
規範
1. 同一不動産を目的とする後順位仮登記担保権者は、先順位仮登記担保権者の被担保債権を弁済するにつき、民法500条(現行504条・505条等参照)にいう「正当な利益」を有する者に当たる。 2. したがって、先順位者の予約完結意思表示後であっても、換価処分がされるまでは、債務の全額を弁済して当然に代位する。 3. 代位した者は、換価手続の一環として代位による附記登記請求権を放棄した上で、先順位権利の抹消登記手続を請求することができる。
事件番号: 昭和63(オ)357 / 裁判年月日: 平成2年6月5日 / 結論: 破棄自判
売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の経由された不動産につき抵当権の設定を受け、その登記を経由した者は、予約完結権の消滅時効を援用することができる。
重要事実
不動産所有者Fに対し、先順位仮登記担保権者(上告人)と後順位仮登記担保権者(被上告人)が存在した。上告人は債務者の履行遅滞を理由に予約完結の意思表示をしたが、清算金の支払をしていなかった。被上告人は自身の債権回収のため、上告人の債権額(元利金合計)を弁済提供し、受領不能を理由に弁済供託を行った。その上で、被上告人は自己の予約完結権を行使し本登記を経由するとともに、上告人に対し先順位権利の抹消を求めた。
あてはめ
後順位仮登記担保権者は、先順位者の権利が実行されれば自己の担保権を失う立場にあるため、弁済について法律上の利害関係を有する。本件では、上告人が予約完結の意思表示をしても、適正な換価処分(清算等)が完了する前であれば、被上告人は「正当な利益」に基づき代位弁済が可能である。被上告人が上告人の債権全額を供託したことで代位の効力が生じ、被上告人は上告人の有する担保権等を取得した。よって、被上告人は自らの所有権取得を完全なものとするため、取得した先順位権利を抹消させる権限を有する。
結論
後順位仮登記担保権者は正当な利益を有する者に当たり、弁済供託により先順位権利を承継するため、上告人に対し当該権利の抹消登記手続を請求できる。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、現在の実務でも後順位担保権者による代位弁済の可否を判断する際の指標となる。答案上は、利害関係を有する第三者の弁済の文脈で、後順位者が自己の順位を繰り上げるための法的手段として引用する。
事件番号: 昭和55(オ)1140 / 裁判年月日: 昭和57年3月25日 / 結論: 棄却
所有権移転請求権保全の仮登記の名義人は、登記上利害関係を有する第三者の承諾書等がないため、仮登記とは無関係に所有権移転登記を経由した場合であつても、特段の事情のない限り、仮登記義務者に対して仮登記の本登記手続を請求する権利を失わず、右仮登記の本登記を承諾すべき第三者の義務も消滅しない。
事件番号: 昭和46(オ)503 / 裁判年月日: 昭和49年10月23日 / 結論: 破棄差戻
一、債権者が、金銭債権の満足を確保するために、債務者との間にその所有の不動産につき、代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約又は売買予約により、債務の不履行があつたときは債権者において右不動産の所有権を取得して自己の債権の満足をはかることができる旨を約し、かつ、停止条件付所有権移転又は所有権移転請求権保全の仮登記をしたと…