一、不動産に関する代物弁済の予約につき請求権保全の仮登記が経由されている場合においては、該不動産の所有権が第三者に移転したときであつても、代物弁済予約権者は、予約の相手方に対して予約完結の意思表示をすべきである。 二、貸金債権担保のため同一不動産につき代物弁済の予約とともに抵当権の設定があり、その抵当権が転抵当に供されている場合において、転抵当権の被担保債権額が原抵当権の被担保債権額以上であるときは、右代物弁済の予約が清算を要しないものでないかぎり、代物弁済予約権者は、予約完結権を行使することができない。
一、代物弁済の予約につき請求権保全の仮登記が経由されている不動産の所有権が第三者に移転したときと予約完結権行使の相手方 二、債権担保のため同一不動産に代物弁済の予約とともに設定された抵当権が転抵当に供されている場合と予約完結権行使の許否
民法482条,民法556条1項,民法369条,民法375条1項,不動産登記法2条2号,不動産登記法7条2項,不動産登記法105条1項
判旨
不動産の代物弁済予約に基づく仮登記がされていても、予約完結権の行使は当初の予約の相手方に対して行うべきであり、また、契約時における不動産価額と債務額が合理的均衡を失う場合は清算型担保として扱うべきである。
問題の所在(論点)
1. 代物弁済予約の仮登記後、目的不動産の所有権が第三者に移転した場合、予約完結の意思表示は誰に対してなすべきか。 2. いわゆる「清算型代物弁済予約」と解される場合において、転抵当等の設定により清算後の受領利益がない債権者は予約完結権を行使できるか。
規範
1. 不動産代物弁済予約上の権利につき仮登記がなされても、仮登記には順位保全の効力があるにすぎず、予約完結までは所有権取得を第三者に対抗できない。したがって、予約完結の意思表示は、不動産の所有権が第三者に移転していても、当初の予約の当事者に対してなすべきである。 2. 貸金債務担保のための代物弁済予約において、契約時の不動産価額と元利金額が合理的均衡を失う場合は、特段の事情のない限り、目的物を換価処分して優先弁済を受け、残額を債務者に返還する「清算型代物弁済予約」と解すべきである。この場合、権利者の実質は一種の担保権者であり、転抵当が設定され、転抵当権の被担保債権額が原抵当権の額を超過するなどの理由で優先弁済を受け得る利益がないときは、予約完結権の行使は許されない。
事件番号: 昭和43(オ)343 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: その他
一、債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使した場合であつても、目的不動産の換価処分または評価清算前に債務の弁済があつたときは、債務者に対し、右仮登記の抹消登記手続をしなけ…
重要事実
被上告人(債権者)は、訴外D観光に対する貸金担保のため、本件建物に極度額5,000万円の根抵当権を設定し、あわせて代物弁済予約を締結して仮登記を経た。その後、D観光は建物を第三者に譲渡し、また被上告人は自身の根抵当権を転抵当の目的とした。転抵当権の被担保債権(3億円)は原根抵当権の極度額を超過していた。被上告人は予約完結権を行使し、所有権移転を前提として、建物譲受人である上官人らに対し不動産登記法上の承諾請求を行った。
あてはめ
1. 予約完結の意思表示の相手方について:仮登記は本登記の順位を保全する効力に留まるため、本登記による対抗要件具備までは第三者に対抗できない。よって、不動産登記法上の構成としても当初の契約当事者に対して意思表示をすべきとした原審の判断は正当である。 2. 清算型代物弁済予約の成否および行使の制限について:本件予約が、不動産価額と債務額の均衡を欠く清算型担保の実質を有する可能性がある。仮にそうであれば、債権者は換価金から優先弁済を受ける一種の担保権者である。本件では原抵当権に三億円の転抵当が設定されており、転抵当債権額が原抵当権を上回る。この場合、債権者が完結権を行使しても優先弁済を主張できる余剰がなく、権利行使の利益が認められないため、完結権の行使は許されない余地がある。
結論
1. 予約完結の意思表示は当初の予約当事者に対してなすべきである。 2. 清算型代物弁済予約において、優先弁済を受けるべき利益を欠く場合は、予約完結権の行使は認められない。本件はその点につき審理不尽があるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、予約完結の意思表示の相手方が「当初の予約当事者」である点は現在も重要である。また、暴利行為的な代物弁済を清算型担保として構成し、権利行使を制限する法理(信義則や権利濫用的な側面)は、譲渡担保等の非典型担保全般における解釈指針として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)201 / 裁判年月日: 昭和25年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が弁済期に債務を履行しない場合に、担保物件の所有権を直ちに債権者に帰属させ、物件を明け渡す旨の合意(代物弁済予約)は、特段の事情がない限り有効である。書面上「売渡担保」との記載があっても、当事者の真意が代物弁済予約にあると認められる場合には、その合意に従った効力が認められる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和41(オ)713 / 裁判年月日: 昭和41年12月2日 / 結論: 棄却
家屋を代物弁済にした場合、目的物の価格算定にさいし、敷地賃借権の価格を加算すべきでない。
事件番号: 昭和44(オ)175 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄差戻
代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、予約完結権を行使したうえ、担保目的実現の手段として本登記をするため、登記上利害関係を有する後順位抵当権者その他目的不動産から優先弁済を受ける地位を有する債権者および目的不動産の第三取得者に対し、その承諾を訴求する場合…