家屋を代物弁済にした場合、目的物の価格算定にさいし、敷地賃借権の価格を加算すべきでない。
家屋を代物弁済とした場合、目的物の価格算定にさいし、敷地賃借権の価格を加算すべきか
民法482条
判旨
建物の代物弁済予約完結権の行使が権利の濫用にあたるかを判断する際、敷地賃貸人の承諾がない限り、建物の価格に借地権の価格を加算すべきではない。
問題の所在(論点)
建物の代物弁済予約において、目的物の価額が被担保債権額を著しく超過し権利の濫用となるとの抗弁を判断する際、敷地賃貸人の承諾がない場合でも借地権価格を建物価格に加算すべきか。
規範
代物弁済予約完結権の行使が権利の濫用(民法1条3項)にあたるか否かを判断するにあたり、目的物である建物の価額を算定する場合、敷地賃貸人の承諾が得られない限り、当該建物の価格に敷地の借地権価格を加算することはできない。
重要事実
債権者(被上告人)は債務者(上告人)に対し、債権を担保するため建物について代物弁済予約を締結した。被担保債権額は予約時と予約完結権行使時で増減はなかった。債権者が予約完結権を行使し、建物の所有権移転を求めたところ、債務者は建物価格に借地権価格を加算すれば被担保債権額を著しく超過し、権利の濫用にあたると抗弁した。なお、敷地の賃貸人から借地権譲渡に関する承諾は得られていなかった。
事件番号: 昭和43(オ)489 / 裁判年月日: 昭和44年10月16日 / 結論: 破棄差戻
一、不動産に関する代物弁済の予約につき請求権保全の仮登記が経由されている場合においては、該不動産の所有権が第三者に移転したときであつても、代物弁済予約権者は、予約の相手方に対して予約完結の意思表示をすべきである。 二、貸金債権担保のため同一不動産につき代物弁済の予約とともに抵当権の設定があり、その抵当権が転抵当に供され…
あてはめ
本件代物弁済予約の被担保債権額は予約時から行使時まで変動していない。また、建物の所有権が移転したとしても、敷地賃貸人の承諾がない以上、譲受人は賃貸人に対して敷地賃借権を対抗できず、法律上有効に借地権を取得したとはいえない。したがって、権利濫用の成否を判断するための建物価格の算定において、実現不確実な借地権の価格を加算しなかった原審の判断は正当である。
結論
敷地賃貸人の承諾がない以上、借地権価格を加算せずに算定した建物価格に基づき権利の濫用ではないと判断した結論は妥当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
代物弁済や譲渡担保において、清算金の算定や権利濫用の主張の基礎となる「目的物の価額」を評価する際、借地上の建物については賃貸人の承諾(または代諾許可)の有無が決定的な要素となることを示した。実務上、借地権譲渡の蓋然性がない状況での権利濫用主張を封じる論理として機能する。
事件番号: 昭和24(オ)201 / 裁判年月日: 昭和25年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が弁済期に債務を履行しない場合に、担保物件の所有権を直ちに債権者に帰属させ、物件を明け渡す旨の合意(代物弁済予約)は、特段の事情がない限り有効である。書面上「売渡担保」との記載があっても、当事者の真意が代物弁済予約にあると認められる場合には、その合意に従った効力が認められる。 第1 事案の概…
事件番号: 昭和41(オ)602 / 裁判年月日: 昭和43年3月7日 / 結論: 破棄差戻
一、判示の事情により、甲不動産につき抵当権設定契約および代物弁済予約形式の合意がされるとともに、乙不動産につき同一債権の担保を目的とする所有名義移転の合意がされた場合において、右両不動産の価額と弁済期までの債務元利金額とが合理的均衡を失するときは、債権者は、特別な事情のないかぎり、右両不動産を換価処分してこれによつて得…
事件番号: 昭和43(オ)343 / 裁判年月日: 昭和48年1月26日 / 結論: その他
一、債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使した場合であつても、目的不動産の換価処分または評価清算前に債務の弁済があつたときは、債務者に対し、右仮登記の抹消登記手続をしなけ…