譲渡担保の目的とされた賃借地上の建物を債権者が帰属清算の方法により取得する場合において、土地賃借権の譲渡につき賃貸人の承諾又はこれに代わる許可の裁判を得ることが不可能又は著しく困難な事情にあると認められるときは、債権者は、借地法一〇条の規定による建物買取請求権を行使する場合における対価をもつて、当該建物の適正評価額として、清算金額を算定することができる。
譲渡担保の目的とされた賃借地上の建物と清算金額算定に際しての適正評価額
民法369条
判旨
借地上建物の譲渡担保権の効力は原則として土地賃借権に及び、帰属清算時の評価は借地権付建物価額によるべきだが、賃貸人の承諾取得が困難な等の特段の事情があれば建物買取請求権行使時の時価を基準とできる。
問題の所在(論点)
借地上建物の譲渡担保において、土地賃借権の譲渡承諾を得ることが著しく困難な場合における帰属清算金の算定基準(評価額の算定方法)。
規範
1. 借地上の建物が譲渡担保に供された場合、特段の事情がない限り、担保権の効力は土地賃借権に及び、担保権実行により建物所有権と共に賃借権も移転する。2. 帰属清算における清算金の算定は、原則として借地権付建物として適正に評価された価額を基準とする。3. ただし、土地賃借権の譲渡について賃貸人の承諾(または代諾裁判)を得ることが不可能又は著しく困難で、建物買取請求権(旧借地法10条)を行使するほかないと認められるときは、同権利行使時の建物時価を基準とすることが許される。
重要事実
債務者(上告人)は、借地上の建物を債権者(被上告人)に対し譲渡担保に供した。債権者が帰属清算の方法により建物所有権を取得するにあたり、清算金の算定基準が争点となった。本件では、土地賃借権の残存期間の問題や、賃貸人が契約終了を理由に土地明渡しを強く要求している経過があり、賃貸人から賃借権譲渡の承諾を得ることが極めて困難な状況にあった。
事件番号: 昭和33(オ)424 / 裁判年月日: 昭和35年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売主が地価の昂騰を理由に代金の増額を要求して代金の受領を拒絶し、契約の効力自体を否定した場合には、受領遅滞に陥ったものと解される。その受領遅滞後に生じた事情変更を理由として、契約の効力の否定や供託の有効性を争うことはできない。 第1 事案の概要:売買契約の買主(被上告人)は、残代金の履行期において…
あてはめ
本件では、土地賃借権の残存期間や賃貸人の頑なな明渡要求といった諸事情を考慮すると、債権者が建物所有権を取得しても土地賃借権の譲渡につき賃貸人の承諾を得ることは到底不可能である。このような場合、債権者としては建物買取請求権を行使する以外に方途がない。したがって、借地権付建物の価額ではなく、建物買取請求権行使時における建物の時価を基準として清算金を算定した原審の判断は正当である。
結論
賃借権譲渡の承諾取得が著しく困難な事情がある場合、建物買取請求権行使時の時価を基準として算定した清算金額(40万円以下)による清算は適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
譲渡担保の清算義務を論ずる際の基本判例。原則は「借地権付建物」としての評価だが、賃貸人との関係悪化等の具体的状況(あてはめ要素)次第で、より低廉な「買取請求権基準」を適用できる。司法試験では清算金の不当性を争う場面で、本件のような「特段の事情」の有無を事実から拾って評価する際に用いる。
事件番号: 昭和41(オ)713 / 裁判年月日: 昭和41年12月2日 / 結論: 棄却
家屋を代物弁済にした場合、目的物の価格算定にさいし、敷地賃借権の価格を加算すべきでない。
事件番号: 昭和43(オ)341 / 裁判年月日: 昭和47年5月23日 / 結論: 棄却
借地法一〇条による建物買取請求権が行使された場合におけるその買取価格の算定には、建物の存在する場所的環境を参酌すべきであり、そのためには、建物自体の価格のほか、建物およびその敷地、その所在位置、周辺土地に関する諸般の事情を総合考察することにより、建物が現存する状態における買取価格を定めなければならないものと解するのが相…