二階建木造建物の階下の一部を賃借した者が、判示事情のものに賃貸人の承諾をえて賃借部分をとりこわしその跡に自己の負担で店舗を作つた場合には、右店舗の一部に原家屋の二階が重なつており、既存の二本の通し柱および天井の梁を利用していても、他に特段の事情のないかぎり右店舗部分は従前の賃借人の区分所有権に帰すものと解すべきである。
建物の賃借部分の改築により借家人のため区分所有権が成立したとされた事例。
民法242条但書,建物の区分所有権に関する法律1条
判旨
賃借人が既存建物の柱や梁を一部利用して店舗を新築した場合、それが既存建物と一体不可分であっても、権原に基づき付属させた独立の建物と認められるときは、民法242条但書の適用により、特約のない限り賃借人が区分所有権を取得する。
問題の所在(論点)
既存建物の構造の一部(柱や梁)を利用して増改築・新築された部分が、既存建物に付合(民法242条本文)したといえるか、あるいは権原に基づく付属物として独立性が認められるか。
規範
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得するが、権原によってその物を付属させたときは、その所有権は付属させた者に帰属する(民法242条但書)。建物の一部を改築等した場合であっても、それが構造上・利用上の独立性を有し、区分所有権の対象となり得る独立の建物と評価されるときは、付合は成立せず、権原を有する者がその所有権を取得する。
重要事実
上告人は、被上告人から建物(原家屋)の階下部分を賃借した。上告人は、建物の腐朽が激しく改修が困難であったため、被上告人の承諾を得て賃借部分を取り壊し、約180万円を投じて店舗を新築した。その際、原家屋の2階を支える2本の通し柱と天井の梁をそのまま利用し、これらが力学的に作用し合っていたため、2階部分を取り除けば店舗の形状を維持できない構造であった。原審は、店舗は原家屋と一体不可分であり独立の建物とはいえないとして、被上告人の所有権を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
本件店舗は、既存の通し柱2本と天井の梁を利用しており、物理的には原家屋の2階部分と一体不可分な構造にある。しかし、上告人は賃貸人の承諾(権原)を得て、多額の費用を投じて自ら工事を請け負わせ、従前の賃借部分を撤去した上で面積を拡張して店舗を作り上げている。このような事情の下では、既存の柱等を利用している事実があるとしても、なお上告人が権原によって付属させた独立の建物というべきであり、区分所有権の対象となり得る。したがって、原則として上告人が所有権を取得するが、新築前に「所有権を当初から貸主に帰属させる」等の特約があった場合には、その特約に従うことになる。
結論
本件店舗は、特約がない限り、民法242条但書により上告人の区分所有権の対象となる。原審は特約の有無を審理すべきであるとして、破棄差戻しとした。
実務上の射程
増改築による付合の成否が争点となる事案で、構造的一体性(物理的非分離性)があっても、賃借人の権原と独立した建物としての実態があれば、242条但書により付合を否定できることを示した。答案上は、まず付合の原則を述べた上で、但書の「権原」と「独立性」の有無を、投下資本の規模や利用実態、新築の経緯から検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和29(オ)156 / 裁判年月日: 昭和32年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾を得て増改築した場合、増改築部分が既存部分と相併合して初めて建物としての効用を完うする関係にあるときは、賃貸人の所有に帰属する。 第1 事案の概要:建物の賃借人が、所有者(賃貸人)の承諾を得た上で、自己の材料と費用を投入して建物に増築及び改築を施した。しかし、当該増改築部分は、…
事件番号: 昭和38(オ)489 / 裁判年月日: 昭和39年9月8日 / 結論: 棄却
民法第二四二条但書は、附合した物が不動産の一部と認められて全然独立の存在を失う場合には、適用の余地がないものと解すべきである。