売買一方の予約に基づいて売買本契約が成立した場合は、売買予約締結当時を基準として詐害行為の要件の具備の有無を判断すべきである。
売買一方の予約に基づき売買本契約が成立した場合における詐害行為の要件具備の時期。
民法424条
判旨
売買予約に基づく本契約の締結は、予約成立時に仮登記がなされている限り、特段の事情がない限り詐害行為とならず、詐害性の有無は予約締結時を基準に判断すべきである。
問題の所在(論点)
売買予約が先行し仮登記がなされている場合において、詐害行為取消権(民法424条)の対象となる行為の存否および詐害性の判定基準時はいつか。
規範
売買予約に基づく本契約の締結が詐害行為に該当するか否かは、原則として売買予約契約締結時の事情を基準に判断すべきである。予約に基づき所有権移転請求権保全の仮登記がなされている場合、本契約の成立時期を合意で早めたとしても、特段の事情がない限り一般債権者の利害に影響を及ぼさないため、本契約締結のみを捉えて詐害行為とすることはできない。
重要事実
債務者Dは、債権者(被上告人)に対し売掛金債務を負担していた。Dは昭和29年6月1日、上告人との間で本件不動産の売買予約を締結し、同月4日に仮登記を経由した。予約では昭和30年1月10日までにDが債務を完済しない場合に本契約をなすとされていたが、Dと上告人は合意により時期を早め、昭和29年12月31日に本契約を締結し、翌年1月6日に本登記を完了した。Dには他にみるべき資産がなかったため、債権者は本契約の締結が詐害行為に当たるとして取消しを求めた。
事件番号: 昭和36(オ)420 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
登記の時に悪意でも、それに先立つ本契約当時に善意であれば、詐害行為は成立しない。
あてはめ
本件の本契約締結は、先行する売買予約の履行としてなされたものである。予約時に仮登記が経由されている以上、本契約による権利移転の効力は仮登記の順位に依拠するため、本契約の時期を当初の予定より若干早めたとしても、それが直ちに一般債権者を害する特段の事情があるとは認められない。したがって、本契約の締結時(昭和29年12月31日)の資産状態のみを理由に詐害行為と断じることはできず、予約締結時(同年6月1日)において詐害行為の要件が具備されていたかを審理すべきである。
結論
売買予約に基づく本契約の締結は、予約時の事情により詐害行為性が決せられる。原審が予約時の財産状態等を審理せずに本契約時を基準に詐害行為と認めたのは法解釈の誤りであり、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
仮登記を伴う予約後の本契約を争う際、基準時を「予約時」に引き戻す強力な射程を持つ。答案上は、詐害行為の対象を本契約とする場合でも、仮登記がある以上は予約時を基準に詐害性を論じる必要がある。特段の事情(仮登記後に債務超過に陥ることを予見してあえて予約した等)がない限り、本契約単体での取消しは困難である。
事件番号: 昭和34(オ)989 / 裁判年月日: 昭和36年6月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】債務の残額に比して代物弁済の目的物の価格が著しく高価であり、予約完結権の行使が債務者に対しあまりに過酷な場合には、信義則(民法1条2項)または公序良俗(同90条)に反し無効となる。目的物の価格算定においては、単なる建築費のみならず、敷地賃借権の有無等の付加価値も考慮すべきである。 第1 事案の概要…
事件番号: 昭和36(オ)258 / 裁判年月日: 昭和39年12月22日 / 結論: 破棄差戻
貸金債権を担保する不動産の売買予約完結権につき右債務を弁済したときは予約完結権のための所有権移転請求権保全の仮登記を抹消する旨の調停が成立した場合において、調停条項に右予約完結権の行使の効果について明記されておらずその他判示事情のもとでは、右調停により、前記予約完結権の行使の効果が当初の代物弁済的性質から、いわゆる清算…
事件番号: 昭和46(オ)88 / 裁判年月日: 昭和48年12月24日 / 結論: 破棄差戻
自称代理人が、金融業者から金融を受け、その債務を担保するため本人所有の農地につき抵当権設定契約及び条件付売買契約を締結するにあたり、本人の実印の押捺された金銭消費貸借並びに抵当権設定証書、農地法三条一項による許可申請書、登記のための委任状及び本人の印鑑証明書を提出したけれども、目的農地の登記済権利証を提出せず、貸主は本…
事件番号: 昭和34(オ)1095 / 裁判年月日: 昭和37年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対し、不動産売買代金受領後に所有権移転登記手続を行う権限を授与した際、相手方が代理人の権限を信ずるに足りる正当な理由があると認められる場合には、民法110条の表見代理が成立する。 第1 事案の概要:本人は、訴外Dを信頼し、本件不動産の所有権がDに移転する前に、印鑑、印鑑証明、登記済証…