登記の時に悪意でも、それに先立つ本契約当時に善意であれば、詐害行為は成立しない。
詐害行為の悪意の時点
民法424条
判旨
詐害行為取消権における受益者の悪意の有無は、原因となる契約等の行為時を基準に判断すべきであり、後日の登記時を基準とするものではない。
問題の所在(論点)
停止条件付代物弁済契約に基づく登記がなされた場合において、詐害行為取消権の要件たる受益者の悪意を判断すべき基準時は、契約締結時か、それとも登記時か。
規範
詐害行為取消し(民法424条1項)において、受益者が「債権者を害することを知っていた」か否かの悪意の基準時は、詐害行為とされる法律行為の当時を基準とする。後日なされた登記の時点における認識によって、遡って行為時の悪意を認めることはできない。
重要事実
債務者Dは被上告人との間で、昭和24年12月25日に本件不動産について停止条件付代物弁済契約を締結した。弁済期である昭和26年9月30日頃に所有権移転と引渡しが行われたが、登記は未了であった。その後、昭和28年8月8日に至り被上告人が保存登記を経了した。上告人は、Dとの売買契約を締結しており、被上告人が保存登記をした当時の悪意を根拠に、当該行為が詐害行為に当たると主張してその取消しを求めた。
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…
あてはめ
本件における詐害行為の対象は、昭和24年に締結された停止条件付代物弁済契約およびそれに基づく所有権移転行為である。仮に上告人が主張するように、被上告人が昭和28年の保存登記の時点で、債務者Dと上告人との売買契約の事実を知っていた(悪意であった)としても、それは登記という後発的事実に関する認識に過ぎない。原因となる代物弁済契約や引渡しの時点において被上告人が悪意であったことを立証しない限り、詐害行為の成立は認められない。
結論
受益者の悪意は行為時を基準に判断されるため、登記時の悪意を理由に詐害行為の成立を認めることはできず、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
不動産の譲渡が詐害行為とされる場合、取消対象となるのは債権的合意や物権変動の意思表示であり、登記はそれに基づく履行行為に過ぎない。実務上、受益者の主観を争う際は、登記時点ではなく、必ず原因行為の時点における認識を主張・立証する必要があることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和36(オ)15 / 裁判年月日: 昭和38年10月10日 / 結論: その他
売買一方の予約に基づいて売買本契約が成立した場合は、売買予約締結当時を基準として詐害行為の要件の具備の有無を判断すべきである。
事件番号: 昭和25(オ)376 / 裁判年月日: 昭和28年10月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しは、自白した事実が真実に反し、かつ、その自白が錯誤に基づいたものであることが証明された場合には、有効に認められる。 第1 事案の概要:上告人は、原審が被上告人による自白の取消しを認め、自白と異なる事実を基礎として裁判を行ったことは、当事者の主張しない事実に基づいたものであり不当…
事件番号: 昭和34(オ)470 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】未登記不動産の所有者がこれを譲渡した後でも、登記を備えない限り譲渡人は完全な無権利者とはならない。したがって、譲渡人名義でなされた保存登記およびそれを前提とする仮差押登記は、対抗関係の法理により有効である。 第1 事案の概要:訴外Dは、自己の所有する本件建物を未登記のまま上告人Aに売り渡した。その…
事件番号: 平成8(オ)718 / 裁判年月日: 平成11年11月25日 / 結論: 破棄自判
建築請負人からの注文者に対する請負契約に係る建物の所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟の提起は、右請負代金債権の消滅時効中断事由である裁判上の請求に準ずるものとはいえず、右訴訟の係属中右請負代金について催告が継続していたということもできない。