建築請負人からの注文者に対する請負契約に係る建物の所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟の提起は、右請負代金債権の消滅時効中断事由である裁判上の請求に準ずるものとはいえず、右訴訟の係属中右請負代金について催告が継続していたということもできない。
建築請負人からの注文者に対する請負契約に係る建物の所有権保存登記抹消登記手続請求訴訟の提起及び右訴訟の係属と請負代金債権の消滅時効の中断
民法147条1号,民法153条
判旨
建物所有権に基づく登記抹消請求と請負代金支払請求とは、訴訟物の性質も給付内容も異なるため、前者の訴え提起をもって後者の債権の裁判上の請求(民法147条1号)に準ずるものと解することはできず、時効中断の効力は生じない。
問題の所在(論点)
登記抹消請求訴訟の提起が、その後に変更された請負代金請求債権の消滅時効を中断させる「裁判上の請求」または「催告」に当たるか。
規範
消滅時効を中断する「裁判上の請求」に準ずる効力が認められるためには、訴訟物たる請求権の法的性質や給付内容が共通するか、あるいは権利行使の意思が客観的に表示されているといえる密接な関係が必要である。また、裁判上の催告としての効力を認めるには、訴訟継続中に当該権利行使の意思が継続的に表示されていることを要する。
重要事実
請負人Xは、建物完成引渡後、代金未払を理由に、注文主Yが不正に取得したとする保存登記の抹消を求める訴えを提起した。第一審係属中にXは、当該訴えを請負残代金支払請求に交換的に変更した。Yは、代金債権の弁済期から3年が経過しているとして消滅時効を援用したが、Xは当初の抹消請求訴え提起により時効が中断したと反論した。
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
あてはめ
当初の建物所有権に基づく妨害排除請求としての登記抹消請求と、変更後の請負契約に基づく代金履行請求は、法的性質も給付内容も全く異なる。Xが当初から代金存在を主張し、実質的な争点が代金弁済の有無であったとしても、抹消請求の訴えをもって代金債権の裁判上の請求に準ずるとは言えない。また、抹消請求訴訟の係属中に、代金支払を求める権利行使の意思が継続的に表示されていたとも認め難いため、裁判上の催告としての効力も否定される。
結論
本件登記抹消請求訴訟の提起には、請負代金債権の時効中断効は認められない。したがって、代金債権は時効により消滅しており、Xの請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
訴えの変更(特に交換的変更)を行う際、旧請求の提起時に新請求の時効が中断するかという文脈で使用する。本判決は、訴訟物や給付内容が異なる場合には原則として中断効を否定する厳格な立場を示しており、答案上は、両請求間の実質的な関連性(経済的利益の共通性や実質的争点の共通性)が極めて高い特段の事情がない限り、時効中断は認められないとする論理で活用する。
事件番号: 昭和50(オ)932 / 裁判年月日: 昭和51年4月8日 / 結論: 棄却
先順位受附の登記申請人が、後順位受附の登記申請に基づき不動産登記法四八条に違反してされた登記につき、同条違反だけを理由にその抹消登記手続を求めることは許されない。
事件番号: 昭和26(オ)88 / 裁判年月日: 昭和29年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法541条に基づく解除のための催告期間が不相当に短い場合であっても、催告後の相当期間が経過すれば解除の効力が発生する。 第1 事案の概要:上告人は、相手方に対して本件契約の履行を求めて催告を行ったが、その際に定めた期間が「不相当」であるとして、解除の効力が争われた。原審は、当該期間経過後、客観的…
事件番号: 昭和49(オ)1087 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: その他
仮登記担保権者が目的不動産を自己の所有に帰属させるとの意思表示をしただけで清算をしないで仮登記のまま目的不動産を第三者に譲渡し、第三者が本登記を経た場合において、本登記が債務者の意思に基づかずにされたときは、債務者は第三者に対して右本登記の抹消手続を請求することができる。
事件番号: 昭和36(オ)420 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
登記の時に悪意でも、それに先立つ本契約当時に善意であれば、詐害行為は成立しない。