貸金債権を担保する不動産の売買予約完結権につき右債務を弁済したときは予約完結権のための所有権移転請求権保全の仮登記を抹消する旨の調停が成立した場合において、調停条項に右予約完結権の行使の効果について明記されておらずその他判示事情のもとでは、右調停により、前記予約完結権の行使の効果が当初の代物弁済的性質から、いわゆる清算的性質に変更したものと認めることはできない。
貸金債権を担保する不動産の売買予約における完結権に関し成立した調停について右予約完結権の行使の効果が代物弁済的性質から清算的性質に変更したものと認めたのを相当でないとした事例。
民法482条,民事調停法16条,民訴法394条,民訴法395条1項6号
判旨
調停条項に明示されていない重大な法律関係の変更については、特段の事情がない限り、合意が成立していなかったものと解するのが相当である。
問題の所在(論点)
調停条項に明示されていない「売買予約完結権の性質の変更(代物弁済型から清算型への変更)」という重大な事項について、合意の成立を認めることができるか。
規範
重大かつ基本に関する法律関係の変更は、調停条項に明示するのが通常である。したがって、調停条項に記載がないにもかかわらずそのような合意が成立したと認めるには、記載しなかったことについて「特段の事情」を要する。そのような事情がない限り、当該合意は成立していなかったものとみるべきである。
重要事実
債権者(上告人)と債務者(被上告人)は、貸金債務の担保として本件不動産に売買予約の仮登記をしていた。その後、両者は調停を成立させ、調停条項には債務の支払方法と、完済時に仮登記を抹消することが定められたが、不履行時の権利行使の態様(代物弁済か清算型か)については明記されなかった。原審は、不動産価格が債権額を上回ることを理由に、調停によって「清算型」への性質変更の合意があったと認定した。
事件番号: 昭和39(オ)1487 / 裁判年月日: 昭和41年9月22日 / 結論: 破棄差戻
停止条件付代物弁済契約は、弁済期日に債務不履行のあつた場合に当初の債務全額の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきであり、債務の一部弁済があつた場合にも、その趣旨は異なるものでなく、その残債務の弁済に代えて目的物の所有権を移転する趣旨と解すべきではない。
あてはめ
本件において、調停主任裁判官らが不動産価格の過大さを理由に即時所有権移転の明文化を認めなかった事実は、不利益を回避するための措置にすぎない。また、上告人が不満ながら調停に応じたのは、既存の予約完結権をそのまま保有することを前提としたものと解される。これらは、重大な合意事項を調停条項に記載しなかったことを正当化する「特段の事情」には当たらない。したがって、予約完結権は性質を変更されることなく、そのままの形で存続していたと解するのが相当である。
結論
調停条項に記載がない以上、特段の事情がない限り性質変更の合意は成立していない。原審の認定には理由不備または審理不尽の違法がある。
実務上の射程
調停や和解条項の解釈において、条項にない「当事者にとって重大な権利変更」を推認することに慎重な判断を示したもの。実務上、権利の性質を変更・消滅させる場合は、条項中に明記すべきであることを示唆している。
事件番号: 昭和38(オ)710 / 裁判年月日: 昭和41年2月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産譲渡の合意の成立が認められない以上、その合意に至る経緯としての周辺事実(賃借権の存在等)について個別に判断を示さなくとも、理由不備や判断遺脱の違法は存しない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は、訴外Fとの間で、Fが国から本件土地の払下げを受けることを停止条件として、本件土地を上告人に譲渡す…
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和36(オ)953 / 裁判年月日: 昭和38年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当な反対給付を条件とする履行の提供は「債務の本旨に従った」ものとはいえず、その後の供託も供託原因を欠き無効である。また、供託金取戻請求権が転付され執行債権者がこれを取り戻したときは、民法496条1項の類推適用により供託は遡及的に効力を失う。 第1 事案の概要:共有物分割調停により、上告人A(買主…
事件番号: 昭和33(オ)992 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約に基づく所有権移転が、不動産価格と債務額に大きな差がある場合でも、相手方の窮迫等を利用して過当な利益を図る目的がない限り、直ちに公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人から37万円を借り受け、利息制限法に基づく引き直し後の元本債務は38万1100円であっ…