手形の原因債権の消滅時効が完成しない間に手形授受の当事者間で仮執行宣言付支払命令により手形債権が確定した場合には、原因債権の消滅時効期間は右支払命令確定の時から一〇年となる。
手形授受の当事者間において仮執行宣言付支払命令により手形債権が確定した場合と原因債権の消滅時効
民法174条ノ2第1項,民訴法545条,民訴法560条,民訴法561条2項
判旨
仮執行宣言付支払命令により確定した手形債権の消滅時効期間が10年に延長された場合、その原因債権の消滅時効期間も、手形債権者の通常の期待を保護する観点から同様に10年に延長される。
問題の所在(論点)
1. 仮執行宣言付支払命令の送達前に完成した原因債権の消滅時効援用が、同命令に対する請求異議の理由となるか。 2. 確定判決等(支払命令を含む)により手形債権の時効期間が10年に延長された場合、その原因債権の時効期間も10年に延長されるか。
規範
1. 仮執行宣言付支払命令の送達前に完成していた原因債権の消滅時効を、送達後に援用して請求異議の理由とすることは、送達後の異議原因(民訴法旧561条2項、現396条・35条2項参照)に当たらず許されない。 2. 手形債権が支払命令の確定によってその消滅時効期間が10年に延長(民法旧174条の2、現174条)されたときは、原因債権の消滅時効期間も同様に、右確定の時から10年に延長される。
重要事実
債権者は、債務者に対して有する原因債権に基づき手形を受領していた。債権者は手形債権を行使して仮執行宣言付支払命令を申し立て、これが確定した。これにより手形債権の消滅時効期間は10年に延長された。その後、債務者は、(1)支払命令送達前に既に完成していた原因債権の消滅時効を、送達後に援用すること、および(2)手形債権の時効期間延長後も、原因債権については別途時効中断措置を講じない限り従前の時効期間で消滅することを前提に、原因債権の消滅時効を援用して請求異議の訴えを提起した。
事件番号: 昭和47(オ)1011 / 裁判年月日: 昭和48年6月14日 / 結論: 棄却
債務者が商法五二二条所定の消滅時効のみを援用することが明らかな場合には、たとえ債権が弁済期から一〇年を経過していても、民法一六七条所定の時効につき判断することを要しない。
あてはめ
1. 請求異議の理由は、債務名義が支払命令である場合、その送達後に生じたものに限られる。本件において送達前に完成していた時効の援用は、その時期を問わず送達前の原因に基づくものであり、異議の理由とならない。 2. 手形は授受の当事者間では原因関係の決済手段であり、手形債権者が支払命令を得て時効を中断・延長させたにもかかわらず、原因債権の時効消滅を防ぐために別途訴提起等を強いるのは、債権者の通常の期待に著しく反する。したがって、手形債権の時効期間が10年に延長されるときは、これに応じて原因債権の時効期間も確定時から10年に変ずると解するのが相当である。
結論
1. 送達前に完成した原因債権の消滅時効は請求異議の理由とならない。 2. 手形債権の時効が確定判決等により10年に延長された場合、原因債権の時効も10年に延長される。本件上告人らの請求異議は理由がない。
実務上の射程
手形債権と原因債権の牽連性を重視し、債権者の権利保護を図った判例である。請求異議の訴えにおける遮断効の範囲(既判力に準ずる効力)の論点、および原因債務と手形債務の時効期間の不一致という実務上の難問に対し、両債権をパラレルに扱う解釈を示した点に射程がある。民法174条(確定判決等による時効延長)の適用場面で、付随的な債権への影響を論じる際の有力な論拠となる。
事件番号: 平成7(オ)1413 / 裁判年月日: 平成10年11月24日 / 結論: 破棄差戻
一 仮差押えによる時効中断の効力は、仮差押えの執行保全の効力が存続する間は継続する。 二 仮差押えの被保全債権につき本案の勝訴判決が確定したとしても、仮差押えによる時効中断の効力が消滅するとはいえない。