貸金業の規制等に関する法律四三条一項にいう「債務者が利息として任意に支払つた」及び同条三項にいう「債務者が賠償として任意に支払つた」とは、債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によつて支払つたことをいい、債務者において、その支払つた金銭の額が利息制限法一条一項又は四条一項に定める利息又は賠償額の予定の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しない。
貸金業の規制等に関する法律四三条一項にいう「債務者が利息として任意に支払つた」及び同条三項にいう「債務者が賠償として任意に支払つた」の意義
貸金業の規制等に関する法律43条1項,貸金業の規制等に関する法律43条3項,利息制限法1条1項,利息制限法4条1項
判旨
貸金業法43条1項の「任意に支払った」とは、債務者が支払を利息や賠償金の支払に充当されると認識した上で、自由な意思により支払うことを指し、利息制限法超過の認識までは不要である。
問題の所在(論点)
旧貸金業法43条1項の「任意に支払った」といえるためには、単に自由な意思で支払うだけでなく、債務者が利息制限法超過の事実やその無効を認識している必要があるか。
規範
貸金業の規制等に関する法律(旧貸金業法)43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」及び同条3項にいう「債務者が賠償として任意に支払った」とは、債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によってこれらを支払ったことをいう。債務者が、支払った金銭の額が利息制限法1条1項又は4条1項の制限額を超えていること、あるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識している必要はない。
重要事実
事件番号: 平成16(オ)424 / 裁判年月日: 平成16年7月9日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金の弁済を受けてから7ないし10日以上後に債務者に領収書を交付したとしても,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用要件である同法18条1項所定の事項を記載した書面の弁済直後における交付がされたものとみることはできない。
上告人は、貸金業者である被上告人から金銭を借り入れ、利息制限法が定める制限額を超える金銭を支払った。上告人は、当該支払が利息等の支払に充当されることを認識して支払っていたが、後に利息制限法超過による無効を主張し、みなし弁済(旧貸金業法43条)の成否を争って、支払った金銭の返還等を求めて上告した。
あてはめ
上告人が被上告人に対してした金銭の支払は、それが利息の契約に基づく利息、あるいは賠償額の予定に基づく賠償金の支払に充当されることを上告人が認識した上で行われたものである。また、その支払は債務者の自己の自由な意思によってなされたことが明らかである。したがって、利息制限法超過の認識がなかったとしても、本件支払は「任意に支払った」ものと評価できる。
結論
債務者が利息等の支払に充当されることを認識し、自由な意思で支払った以上、利息制限法超過の認識がなくても「任意に支払った」に該当し、みなし弁済が成立し得る(本件上告棄却)。
実務上の射程
本判決は、みなし弁済の要件である「任意性」について、客観的な支払意思を重視する基準を示した。ただし、後の最高裁判例(シティズ判決等)により、期限の利益喪失特約がある場合の支払は「自由な意思」を欠くとされ、実務上の適用範囲は極めて限定的となった点に注意を要する。
事件番号: 昭和28(オ)290 / 裁判年月日: 昭和30年2月22日 / 結論: 棄却
利息制限法(旧法)第二条超過の約定利率による遅延利息を債務者が任意に支払つたときは、右超過部分の返還を請求することはできない。
事件番号: 昭和41(オ)1281 / 裁判年月日: 昭和43年11月13日 / 結論: 棄却
利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つた債務者は、制限超過部分の充当により計算上元本が完済となつたときは、その後に債務の存在しないことを知らないで支払つた金額の返還を請求することができる。