貸金業者が貸金の弁済を受けてから7ないし10日以上後に債務者に領収書を交付したとしても,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用要件である同法18条1項所定の事項を記載した書面の弁済直後における交付がされたものとみることはできない。
貸金業者から債務者に対して弁済の直後に貸金業の規制等に関する法律18条1項所定の事項を記載した書面の交付がされたものとみることができないとされた事例
貸金業の規制等に関する法律18条1項,貸金業の規制等に関する法律43条1項,利息制限法1条1項
判旨
貸金業法(旧)の下で、利息の天引きがなされた場合における天引利息については、同法43条1項(みなし弁済)の適用はない。また、同法18条1項に定める受取証書の交付は、原則として弁済の直後になされる必要があり、弁済から7日から10日以上経過した後の交付は同条の要件を欠く。
問題の所在(論点)
1. 利息の天引きがなされた場合、当該天引利息について貸金業法43条1項(みなし弁済)が適用されるか。 2. 弁済から7〜10日以上経過した後の受取証書交付が、同法18条1項の「直ちに」交付したといえるか(みなし弁済の要件を満たすか)。
規範
1. 貸金業者との金銭消費貸借契約に基づき天引きされた利息については、貸金業法43条1項の規定の適用はない。 2. 同法18条1項が定める受取証書の交付は、弁済の「都度、直ちに」行うことが義務付けられているため、特段の事情がない限り、弁済の直後に交付されなければならない。
重要事実
貸金業者である被上告人と、写真現像業を営む上告人との間で継続的な金銭消費貸借取引があった。本件取引は、(1)貸付時に利息が天引きされた取引1〜30と、(2)天引きはなかったが、手形決済による弁済から7日から10日以上経過した後に受取証書(領収書)が交付された取引31〜33に分かれる。上告人は利息制限法を超える支払分の元本充当による過払金返還等を求め、被上告人は未払金の返還を求めて争った。
あてはめ
1. 判例の趣旨に照らし、天引きされた利息については、債務者が現実に利息として支払う行為を欠くため、法43条1項の適用はない。したがって取引1〜30についてみなし弁済は成立しない。 2. 18条1項の書面は、17条書面とは異なり弁済の都度直ちに交付すべきものである。本件では弁済から7〜10日以上経過した後に本件各領収書が交付されており、これは「弁済の直後」とはいえず、同項所定の要件を満たさない。また、適用を肯定すべき特段の事情も認められない。
結論
取引1〜30および31〜33のいずれについても、貸金業法43条1項の適用要件を欠き、みなし弁済は成立しない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
旧貸金業法下のみなし弁済に関する判例であるが、現行法においても「書面の即時交付」が要求される場面での規範として参照し得る。特に「直ちに」の意義を厳格に解し、数日の遅延でも要件欠如となり得る点に注意が必要である。答案上は、利息天引き=みなし弁済否定、数日の書面交付遅れ=「直ちに」の要件違反、という形式で論述する。
事件番号: 平成16(受)1518 / 裁判年月日: 平成18年1月13日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業の規制等に関する法律施行規則15条2項の規定のうち,貸金業者が弁済を受けた債権に係る貸付けの契約を契約番号その他により明示することをもって,貸金業の規制等に関する法律18条1項1号から3号までに掲げる事項の記載に代えることができる旨定めた部分は,同法の委任の範囲を逸脱した違法な規定として無効である。 2 利息…
事件番号: 平成15(オ)386 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄差戻
1 貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,貸金業の規制等に関する法律43条1項の適用はない。 2 貸金業の規制等に関する法律17条1項に規定する書面に該当するためには,当該書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならない。 3 貸金業者が貸金の弁済を受…
事件番号: 昭和41(オ)1281 / 裁判年月日: 昭和43年11月13日 / 結論: 棄却
利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つた債務者は、制限超過部分の充当により計算上元本が完済となつたときは、その後に債務の存在しないことを知らないで支払つた金額の返還を請求することができる。
事件番号: 昭和26(オ)576 / 裁判年月日: 昭和32年9月5日 / 結論: 棄却
消費貸借上の貸主が、借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことが認められない限り、利息が月一割と定められたという一事だけでは、この約定を公序良俗に反するものということはできない。