消費貸借上の貸主が、借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことが認められない限り、利息が月一割と定められたという一事だけでは、この約定を公序良俗に反するものということはできない。
消費貸借においてなされた月一割の利息を支払う約定と公序良俗違反の有無
民法90条,旧利息制限法2条
判旨
利息制限法を超える高利の利息約定であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるわけではなく、債権者が債務者の窮迫、軽卒、無経験に乗じて不当な利益を得る目的があったか等の諸事情を考慮して判断すべきである。
問題の所在(論点)
利息制限法の定める制限を大幅に超える月1割という高率の利息約定が、民法90条の公序良俗に違反して当然に無効となるか。
規範
金銭消費貸借契約における利息約定が公序良俗(民法90条)に反し無効となるか否かは、単に利息が利息制限法の制限を超え高率であるという一事のみで決すべきではない。貸主が借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたか否かといった、契約締結に至る主観的・客観的な諸事情を総合的に考慮して判断されるべきである。
重要事実
上告人(債務者)は、D(債権者)との間で金銭消費貸借契約を締結した際、月1割(年120%)という極めて高率な利息を約定した。上告人は、当該利息が利息制限法に違反し、かつ著しく高率であることから、公序良俗に反し無効であると主張して争った。原審は、当該高利約定を直ちに無効とは認めず、上告人の請求を一部棄却したため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和36(オ)1150 / 裁判年月日: 昭和39年10月16日 / 結論: 棄却
利息制限法は、金銭貸借の場合に限り適用すべきものであつて、再売買予約付の売買には適用がない。
あてはめ
本件における月1割の利息が利息制限法に反する高率なものであることは認められる。しかし、記録上、貸主であるDが、借主である上告人の「窮迫、軽卒もしくは無経験」を利用したという事実は認められない。また、Dにおいて「著しく過当な利益の獲得を目的とした」と断定できる特段の事情も認められない。したがって、単に利息が月1割という事実のみをもって、直ちに公序良俗に違反すると断ずることはできない。
結論
本件の利息約定は公序良俗に違反せず有効である。したがって、原判決の判断は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
利息制限法超過利息の効力について、同法による無効(行政的・民事的な制限)と、民法90条による公序良俗無効を区別する。答案上は、利息が暴利といえる場合であっても、即座に90条を適用せず、債務者の困窮状態等の属性や債権者の主観的意図(暴利行為の要件)を摘示した上で、公序良俗違反の有無を慎重に検討する際の指標として用いる。
事件番号: 昭和32(オ)804 / 裁判年月日: 昭和36年12月1日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当な理由」の判断において、代理人が本人の利益ではなく自己の債務決済のために権限を行使していると疑われる事情がある場合、相手方がその権限を信じたことに過失がないとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(本人)の代理人と称するDは、被上告人(相手方)に対し、上告人のための金…
事件番号: 昭和36(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和37年2月27日 / 結論: 棄却
法定代理人と本人との利益相反の有無は、もつぱら、その行為自体を観察して判断すべきであつて、当該借入金の用途が何であるかというような当該契約に至つた縁由を考慮して判断すべきではない。
事件番号: 昭和52(オ)595 / 裁判年月日: 昭和54年4月17日 / 結論: 破棄差戻
登記が偽造文書による登記申請に基づいてされた場合に登記義務者において登記の無効を主張することができないものというためには、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者においてその登記を拒みうる特段の事情がないというだけでなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があることを要す…
事件番号: 昭和26(オ)560 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: 棄却
一 一抵当権設定契約とともになされた停止条件付代物弁済契約は、特段の事由のないかぎり、代物弁済の予約と解すべきものである。 二 右の場合において、抵当権を実行するか、代物弁済の予約を完結させるかは、債権者の選択に委される。