法定代理人と本人との利益相反の有無は、もつぱら、その行為自体を観察して判断すべきであつて、当該借入金の用途が何であるかというような当該契約に至つた縁由を考慮して判断すべきではない。
法定代理人と本人との利益相反の有無を判断するにつきその行為の縁由を考慮すべきか
民法826条
判旨
親権者が未成年者の法定代理人として行う行為が、民法826条の利益相反行為に該当するか否かは、親権者の意図や行為の理由(縁由)ではなく、専らその行為自体の外形的な性質によって客観的に判断すべきである。
問題の所在(論点)
親権者が未成年者を代理して、子を借主とする借入れおよび子名義の不動産に対する抵当権設定を行う行為について、親権者の主観的な目的(自己の用途への流用)が民法826条の利益相反行為の成否に影響するか。
規範
民法826条にいう「利益相反行為」に該当するか否かは、親権者の主観的な意図や、その行為に至った縁由(動機や目的)を考慮すべきではなく、専ら行為自体を客観的に観察して判断すべきである(外形的客観説)。
重要事実
未成年者である上告人の親権者が、上告人の法定代理人として、被上告人との間で上告人を借主とする金銭消費貸借契約および上告人所有不動産への抵当権設定契約を締結した。上告人は、これらの契約は親権者自身の用途に供するための借入れ(自己のためにする意図)であり、利益相反行為にあたると主張して、その効力を争った。
事件番号: 昭和31(オ)888 / 裁判年月日: 昭和35年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】親権者が子の代理人として行う行為が民法826条の「利益相反行為」に該当するか否かは、行為の動機や実質的な利害関係ではなく、行為自体の外形から客観的に判断すべきである。親権者が第三者の債務のために子の不動産に抵当権を設定する行為は、親権者自身の債務のための設定でない限り、原則として利益相反行為に当た…
あてはめ
本件における各契約は、形式的には「子を借主とし、その債務を担保するために子の不動産を担保に供する」という行為である。これは外形的に観察すれば子のための行為であり、親権者と子の利益が対立する関係にはない。仮に、親権者が借入金を自分自身の用途に使う意図であったとしても、それは契約締結に至った「縁由」にすぎず、行為自体の客観的な性質を左右するものではない。したがって、本件各契約は利益相反行為には当たらない。
結論
本件各契約は利益相反行為に該当せず、法定代理権の行使として有効である。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
利益相反行為の判断基準として「外形的客観説」を確立した重要判例である。答案上は、まず本基準で利益相反性を否定した上で、親権者が自己や第三者の利益を図る目的があった場合には、別途「代理権の濫用(民法107条類推適用)」の成否を検討するという二段構えの構成をとるのが実務・試験上の通説的運用である。
事件番号: 昭和33(オ)87 / 裁判年月日: 昭和33年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理権のない者が勝手に本人の実印を持ち出して委任状を偽造し、消費貸借契約や抵当権設定登記を行っても、本人がそれを適法な代理権に基づくものと認めた事情や、特段の表見代理の成立が認められない限り、その効果は本人に帰属しない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dとの間でりんごの取引を行っていたが、Dが生…
事件番号: 昭和34(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和37年10月2日 / 結論: 棄却
親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第八二六条にいう「利益が相反する行為」にあたる。
事件番号: 昭和45(オ)593 / 裁判年月日: 昭和45年12月18日 / 結論: 破棄差戻
親権者が第三者の金銭債務についてみずから連帯保証人になるとともに、子の代理人として右債務を担保するため子の所有不動産に抵当権を設定する行為は、民法八二六条にいう利益相反行為にあたる。
事件番号: 昭和51(オ)1359 / 裁判年月日: 昭和52年3月31日 / 結論: 棄却
親権者が、債務者である株式会社の代表取締役として第三者から金銭を借り受け、右債務を担保するため、みずから個人として連帯保証をするとともに子の不動産につき根抵当権を設定する行為は、民法八二六条にいう利益相反行為にあたる。