債務者が商法五二二条所定の消滅時効のみを援用することが明らかな場合には、たとえ債権が弁済期から一〇年を経過していても、民法一六七条所定の時効につき判断することを要しない。
商事普通消滅時効のみを援用する場合に民事普通時効につき判断することの要否
民法145条,民法167条,商法522条
判旨
消滅時効の援用において、当事者が特定の時効期間(商事時効等)を明示して主張している場合には、裁判所は当事者が主張しない他の時効(民事時効等)について判断する必要はない。
問題の所在(論点)
当事者が商事消滅時効のみを明示的に援用している場合、裁判所は民法上の消滅時効についても判断する義務を負うか。弁論主義との関係が問題となる。
規範
消滅時効は当事者が援用しなければ裁判所がこれによって裁判をすることができない(民法145条)。当事者が特定の時効期間を明示して援用の範囲を限定している場合、弁論主義の原則に基づき、裁判所は当該主張の範囲においてのみ審理判断すべきであり、主張のない他の時効期間の成否を判断することは要しない。
重要事実
上告人は本件債務につき、訴状段階では時効期間を明示していなかったが、その後の手続において被上告人による時効中断の主張がなされたことを受け、商法522条(当時)所定の5年の商事消滅時効を主張することを明らかにした。しかし、原審は商事時効のみを検討し、民法167条所定の10年の時効については判断を示さなかったため、上告人が判断遺脱の違法を主張して上告した。
あてはめ
上告人は記録上、本件債務について商法522条所定の消滅時効のみを援用していたことが明らかである。被上告人の時効中断の主張に対抗する形で、あえて商事時効を主張することを明確に特定したといえる。そうであれば、裁判所の審理対象は上告人が主張した商事時効の成否に限定される。したがって、原審が民法167条所定の時効について判断しなかったことに何ら違法はない。
結論
当事者が特定の時効期間を明示して援用している場合、裁判所がそれ以外の時効について判断しなかったとしても、審理不尽や判断遺脱の違法は認められない。
実務上の射程
時効の援用という法的構成について、当事者の主張に拘束される範囲を明確にした事例である。実務上、消滅時効の援用にあたっては期間の主張が重要であり、予備的にでも民事時効の主張を併記しない限り、裁判所による有利な判断は期待できないことを示唆している。
事件番号: 昭和42(オ)709 / 裁判年月日: 昭和43年4月19日 / 結論: 棄却
甲が乙丙丁の甲に対する昭和三八年五月六日付一一〇万円(ただし、乙丙は各四〇万円、丁は三〇万円)、弁済期同三九年五月五日、利息日歩二銭八厘毎月末日払とする消費貸借債権の存在しないことを主張し、右債権の不存在確認、右債権を被担保債権とする抵当権の設定登記の抹消登記手続などを求め、乙らが右債権は存在する旨主張したのに対し、裁…
事件番号: 昭和26(オ)576 / 裁判年月日: 昭和32年9月5日 / 結論: 棄却
消費貸借上の貸主が、借主の窮迫、軽卒もしくは無経験を利用し、著しく過当な利益の獲得を目的としたことが認められない限り、利息が月一割と定められたという一事だけでは、この約定を公序良俗に反するものということはできない。