判旨
上告理由として主張された憲法違反が、実質的に原審の訴訟手続違背や事実認定の不当をいうにすぎない場合には、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(昭和25年法律第138号)に規定する適法な上告理由に該当しない。
問題の所在(論点)
形式的に憲法違反を主張する上告理由が、その実質において単なる訴訟手続の違背や事実認定の非難に帰する場合、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」に定める適法な上告理由として認められるか。
規範
最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律1号ないし3号、および「法令の解釈に関する重要な主張を含む」もの(同法適用の前提)に該当するか否かは、主張の形式的な名称ではなく、その実質によって判断される。単なる訴訟手続の違背や事実認定の非難を憲法違反の形式で主張しても、同法所定の上告理由には当たらない。
重要事実
上告人が原審の判決に対し、憲法違反を理由として上告を提起した事案である。しかし、その主張の内容は、原審における訴訟手続の不備や、原審が行った事実認定の妥当性を争うものであった。
あてはめ
上告人の主張(論旨)を検討すると、違憲を称してはいるものの、その実体は原審の単なる訴訟手続の違背を指摘し、あるいは事実認定を非難するものにすぎない。これは、同法1号ないし3号のいずれの要件も充足せず、また「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。したがって、適法な上告理由としての実質を欠いているといえる。
結論
本件上告は、適法な上告理由を備えていないため、棄却される。
実務上の射程
上告理由の形式的な記載にとらわれず、その実質を審査して門前払い(上告棄却)を行う実務上の運用を認めたものである。答案上は、民事訴訟法における上告理由の適法性や、上告審の性格(法律審・事後審)を論じる際の補強材料として機能する。
事件番号: 昭和27(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が「民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告理由(論旨)が、当時の「民事上告事件の審判の特例に関する法律」1条1号から3号までのいずれ…
事件番号: 昭和28(オ)1157 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(当時)の規定に基づき、単なる訴訟法違反や事実誤認の主張は上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決に対し、訴訟法違反や事実誤認、あるいはこれらを前提とする法令違反を理由として上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):上告人…
事件番号: 昭和32(テ)22 / 裁判年月日: 昭和32年12月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告であっても、その実質が原審の事実認定を非難するにすぎない場合は、特別上告の適法な理由とはならない。 第1 事案の概要:上告人が憲法違反を理由として特別上告を提起したが、その主張の内容は、原判決が行った事実認定の手続きや結果に対する不服申し立てであった。 第2 問題の所在(論点…
事件番号: 昭和32(オ)804 / 裁判年月日: 昭和36年12月1日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当な理由」の判断において、代理人が本人の利益ではなく自己の債務決済のために権限を行使していると疑われる事情がある場合、相手方がその権限を信じたことに過失がないとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(本人)の代理人と称するDは、被上告人(相手方)に対し、上告人のための金…
事件番号: 昭和38(オ)1093 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても、同申請書に当該抵当権の被担保債権額として元本極度額金何円なる記載がある場合、右申請書によつてなされた根抵当権設定登記は有効である。