登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても、同申請書に当該抵当権の被担保債権額として元本極度額金何円なる記載がある場合、右申請書によつてなされた根抵当権設定登記は有効である。
登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても申請書の記載趣旨により根抵当権設定登記がなされた場合の登記の効力。
不動産登記法117条
判旨
登記申請書等に「根抵当権」との明示がない場合であっても、「元本極度額」等の記載からその性質が認められ、かつ普通抵当権であることを要件とした事情がない限り、根抵当権設定登記は有効である。
問題の所在(論点)
登記申請書や委任状に「根抵当権」という明文の表示がない場合、その登記の効力は認められるか。具体的には、元本極度額の記載をもって根抵当権の設定意思を認定できるかが問題となる。
規範
登記申請手続において、申請書や委任状に直接「根抵当権」という用語の記載がなくても、債権額の表示として「元本極度額」といった根抵当権に特有の性質を示す用語が記載されており、かつ、当該設定契約が普通抵当権であることを特に要件としたものと認められない場合には、当該登記は有効に成立する。
重要事実
債務者D(上告人らの先代)と債権者(被上告人)との間で本件根抵当権設定登記が経由された。上告人らは、登記申請書および設定者の委任状に「根抵当権」という文字の記載がないことを理由に、当該登記は無効であると主張して上告した。なお、当該申請書には「債権額として元本極度額金四〇万一〇九五円」との記載が存在していた。
事件番号: 昭和29(オ)738 / 裁判年月日: 昭和31年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】私文書の思想内容ではなく、その存在自体や記載文字・印影の形状を証拠とする場合には、民事訴訟法上の文書の真正な成立を証明する必要はない。 第1 事案の概要:上告人の代理人と称するDが、上告人から預かっていた印章を用いて根抵当権設定契約書や約束手形等(乙各号証)を作成した。原審は、これら私文書の成立の…
あてはめ
本件では、登記申請書に「元本極度額」としての金額記載がある。この「極度額」という概念は、不特定の債権を一定の限度額まで担保する根抵当権の本質的要素であり、実質的に根抵当権としての性質を表示するものといえる。また、原判決が挙げた証拠に照らしても、本件設定が普通抵当権(根抵当権でないこと)を前提条件としていた事実は認められない。したがって、形式的に「根抵当権」という文字がなくとも、実質において根抵当権の設定登記として有効に経由されたものと解される。
結論
本件根抵当権設定登記は有効であり、原判決に法令違背はない。したがって、上告は棄却される。
実務上の射程
登記原因の解釈において、形式的な用語の有無のみならず、記載内容から読み取れる実質的な権利の性質(極度額の有無等)を重視する。物権変動の実態と公示の合致を緩やかに認める傾向にあるため、登記の無効を主張する際の反論として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)494 / 裁判年月日: 昭和28年10月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由として主張された憲法違反が、実質的に原審の訴訟手続違背や事実認定の不当をいうにすぎない場合には、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律(昭和25年法律第138号)に規定する適法な上告理由に該当しない。 第1 事案の概要:上告人が原審の判決に対し、憲法違反を理由として上告を提…
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
事件番号: 昭和46(オ)908 / 裁判年月日: 昭和47年12月19日 / 結論: 破棄差戻
根抵当権設定の交渉過程において、当初は債権者が債務者を再興させるために一定の条件が成就したときに行なうべき再建融資のみを被担保債権とすることが予定されていたが、その後右条件成就が未定の間に、債権者が債務者の支払手形を決済させるためのつなぎ融資を行ない、根抵当権設定者において後者を被担保債権に加えることに同意する等判示の…