一 未成年者の親権者の債務担保のため未成年者所有の不動産に抵当権を設定するについて、家庭裁判所のなす特別代理人選任の審判は、被担保債権額が表示されていない場合でも有効である。 二 未成年者の親権者の債務担保のため未成年者所有の不動産に抵当権を設定するについて、家庭裁判所によつて選任された未成年者の特別代理人は、根抵当権設定についても授権されたものと解するのが相当である。
一 親権者の債務の担保のため未成年者の不動産に抵当権を設定するについての特別代理人選任の審判と被担保債務額の表示の要否 二 親権者の債務の担保のため未成年者の不動産に抵当権を設定するについて選任された特別代理人の根抵当権設定についての権限の有無
民法826条,民法369条,家事審判法9条1項甲類10号
判旨
親権者の債務を担保するため未成年者所有の不動産に抵当権を設定する目的で選任された特別代理人は、審判に被担保債権額の表示がない場合であっても、根抵当権を設定する権限を有する。
問題の所在(論点)
家庭裁判所による特別代理人の選任審判において、被担保債権の金額が明示されていない場合、当該特別代理人は根抵当権を設定する権限まで有するか(民法826条、不動産登記法上の代理権の範囲)。
規範
親権者が自己の特定債務の担保として子所有の不動産に抵当権を設定するため、家庭裁判所が特別代理人を選任する審判をした場合、当該審判に被担保債権の金額が表示されていないときであっても、特段の事情のない限り、当該特別代理人は根抵当権を含む抵当権の設定について包括的に授権されたものと解するのが相当である。
重要事実
当時未成年であった上告人(本人)の親権者DおよびEは、自己の債務を担保するため、上告人所有の不動産に抵当権を設定することを目的として特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てた。家庭裁判所は、これを受けてGを特別代理人に選任する旨の審判を下したが、当該審判において被担保債権の具体的な金額は表示されていなかった。その後、特別代理人Gは当該不動産に根抵当権を設定した。
事件番号: 昭和39(オ)76 / 裁判年月日: 昭和41年6月28日 / 結論: 棄却
一 復代理人を選任しえない場合に、原審が復代理人が適法に選任されたと判断したことは違法であるが、原判示事実関係(原判決理由参照)に照らせば、代理人が復代理人としてではなく自己の代理人を選任したものと解する余地があり、右代理人の代理人について代理人のため、また、代理人について本人のため、順次民法第一一〇条の表見代理が成立…
あてはめ
本件において、家庭裁判所は親権者の債務の担保として不動産に抵当権を設定するために特別代理人を選任している。審判において債権額の限定がない以上、抵当権設定という目的の範囲内において、その態様が普通抵当権であるか根抵当権であるかを問わず代理権は及ぶと解される。したがって、選任された特別代理人Gがなした根抵当権の設定行為は、授権された権限の範囲内の行為といえる。
結論
特別代理人Gは根抵当権を設定する権限を有するため、当該根抵当権設定契約は有効である。
実務上の射程
特別代理人の権限範囲は選任審判の趣旨に照らして判断されるが、本判決は、債権額の表示がない場合には抵当権の種類(普通抵当か根抵当か)を問わず包括的な授権が認められることを示した。答案上では、代理権の範囲の解釈、あるいは利益相反行為における特別代理人の権限の機動性を肯定する文脈で活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)238 / 裁判年月日: 昭和39年10月6日 / 結論: 破棄差戻
本人が他人に対し自己の印章を交付し、これを使用してある行為をなすべき権限を与え、その他人がこれを使用し、代理人として、第三者との間で権限外の行為をした場合、当該行為をする際に通常人であれば代理人の権限について疑念をもつような特別の事情があるときは、第三者が、印章を託された代理人にその取引をする代理権があると信じたとして…
事件番号: 昭和36(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和37年2月27日 / 結論: 棄却
法定代理人と本人との利益相反の有無は、もつぱら、その行為自体を観察して判断すべきであつて、当該借入金の用途が何であるかというような当該契約に至つた縁由を考慮して判断すべきではない。
事件番号: 昭和34(オ)872 / 裁判年月日: 昭和37年4月26日 / 結論: 棄却
民法第一〇九条の表見代理の成立につき、第三者が重大な過失なくして代理権ありと信じたことを要する。
事件番号: 昭和38(オ)1093 / 裁判年月日: 昭和39年6月4日 / 結論: 棄却
登記申請書には抵当権設定と表示されていて「根抵当権」なる文言が用いられていなくても、同申請書に当該抵当権の被担保債権額として元本極度額金何円なる記載がある場合、右申請書によつてなされた根抵当権設定登記は有効である。