一 執行文付与に対する異議の訴における事実審の口頭弁論終結時までに生じていた請求に関する異議事由を後訴である請求に関する異議の訴において主張することは許される。 二 民訴法三八九条一項により事件を第一審に差戻すか否かは、原則として、控訴裁判所の裁量に委ねられる。
一 執行文付与に対する異議の訴における事実審の口頭弁論終結時までに生じていた請求に関する異議事由を後訴である請求に関する異議の訴において主張することの許否 二 民訴法三八九条一項による差戻しの基準
民訴法389条,民訴法545条,民訴法546条
判旨
執行文付与に対する異議の訴えと請求に関する異議の訴えは目的を異にする別個の訴えであり、前者の事実審口頭弁論終結時までに生じた事由であっても、後者の訴えにおいて主張することは妨げられない。
問題の所在(論点)
執行文付与に対する異議の訴え(前訴)の判決が確定した場合、その事実審口頭弁論終結時までに生じていた請求に関する異議事由を、後の請求異議の訴え(本訴)において主張することは許されるか。前訴において当該事実を異議事由として主張していた場合でも可能か。
規範
執行文付与に対する異議の訴え(民執法34条)と請求異議の訴え(同35条)は、目的を異にする別個の訴えである。前者の審理対象は、条件成就の有無や承継の存否といった執行文付与の適否に限られ、請求権自体の存否等の「請求に関する異議事由」を主張することはできない。したがって、前者の事実審口頭弁論終結時までに生じていた事由であっても、これを後者の訴えにおいて主張することは既判力に抵触せず、許容される。これは、同一の事実が執行文付与に対する異議事由と請求異議事由の両方の性質を有する場合であっても同様である。
重要事実
債務名義の承継人として執行文を付与された被上告人が、まず「賃貸借契約の成立により承継人としての地位が消滅した」と主張して執行文付与に対する異議の訴え(前訴)を提起したが、敗訴した。その後、被上告人は同一の賃貸借契約の成立を理由に「明渡請求権が消滅した」と主張して、請求異議の訴え(本訴)を提起した。これに対し、上告人(債権者)側が、前訴の口頭弁論終結前に存在した事由を本訴で主張することは許されないと争った事案である。
あてはめ
前訴である執行文付与に対する異議の訴えにおいて、被上告人は賃貸借契約の成立を「承継人としての地位の消滅」という執行文付与の適否に関する事由として主張していた。これに対し、本訴である請求異議の訴えにおいては、同一の事実を「明渡請求権の消滅」という請求権自体の存否に関する事由として構成している。両訴訟は審理対象を異にする別個の訴えであるから、前訴の判決による遮断効は本訴の異議事由には及ばない。したがって、前訴の口頭弁論終結前に生じていた事実であっても、本訴において主張することを妨げる理由はないと解される。
結論
前訴の口頭弁論終結前に生じた事由であっても、請求異議の訴えにおいてこれを主張することは許される。
実務上の射程
執行文付与に対する異議の訴えと請求異議の訴えが排他的な関係にないことを明示した判例であり、双方の訴訟物の違い(手続的適否vs実体法的請求権の存否)を論述する際の根拠となる。実務上、執行文付与に対する異議で敗訴しても、実体上の抗弁(弁済や契約締結等)があれば請求異議の訴えで再度争えることを担保している。
事件番号: 昭和32(オ)381 / 裁判年月日: 昭和34年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求異議の訴えにおける異議の事由が、前訴において当然に主張し得たものである場合には、これを前訴で主張せず別途本訴で主張することは許されない。この理は、執行力の排除を求める債務名義が判決であるか公正証書であるかによって差異を生じない。 第1 事案の概要:上告人らは、債務名義の執行力排除を求めて請求異…
事件番号: 昭和55(オ)51 / 裁判年月日: 昭和55年5月1日 / 結論: 棄却
執行文付与に対する異議の訴においてその請求の原因として請求に関する異議の事由を主張することは許されない。