判旨
請求異議の訴えにおける異議の事由が、前訴において当然に主張し得たものである場合には、これを前訴で主張せず別途本訴で主張することは許されない。この理は、執行力の排除を求める債務名義が判決であるか公正証書であるかによって差異を生じない。
問題の所在(論点)
前訴で主張可能であった異議事由を、後の請求異議の訴えにおいて主張することが許されるか。また、債務名義が判決か公正証書かによって、この判断に差異が生じるか。
規範
請求異議の事由が前訴において当然に主張し得たものである場合には、手続の安定および紛争の一回的解決の観点から、これを前訴において主張せず、別途本訴(請求異議の訴え)において主張することは許されない。
重要事実
上告人らは、債務名義の執行力排除を求めて請求異議の訴えを提起した。しかし、上告人らが本件で主張する異議の事由は、本件訴訟に先立つ前訴において当然に主張することが可能であった。それにもかかわらず、上告人らは前訴で当該事由を主張せず、本訴において初めてこれを主張した。
あてはめ
上告人らが主張する異議の事由は、前訴の段階で既に存在しており、当然に主張し得たものである。前訴において主張を尽くす機会があったにもかかわらず、これを放置して別訴で争うことは、判決の既判力や信義則の観点から許容しがたい。また、執行力を排除しようとする対象が判決であるか公正証書であるかは、前訴で主張可能であった事由を後出しすることを禁じる法理の適用を左右するものではない。したがって、本件の異議事由の主張は失当といえる。
結論
前訴で主張し得た事由を本訴で主張することは許されず、上告人らの請求は理由がない。債務名義が公正証書であっても結論は変わらない。
実務上の射程
民事執行法35条2項は判決による債務名義の異議事由を口頭弁論終結後のものに限定しているが、本判決は(同法施行前のものであるが)前訴で主張可能であった事由の蒸し返しを一般的に禁止する法理を示している。特に公正証書が債務名義である場合でも、関連する前訴が存在する場合には同様の遮断効的な規律が及ぶ可能性がある点に実務上の注意を要する。
事件番号: 昭和42(オ)663 / 裁判年月日: 昭和42年10月31日 / 結論: 棄却
同時履行の抗弁権の事由を理由として、請求異議の訴を提起することはできない。