同時履行の抗弁権の事由を理由として、請求異議の訴を提起することはできない。
同時履行の抗弁権の事由を理由とする請求異議の訴の適否
民訴法545条,民訴法546条
判旨
同時履行の抗弁権の存在は執行開始の段階で判断される事由にすぎないため、請求異議の訴えおよび執行文付与に対する異議の訴えの異議事由とはならない。
問題の所在(論点)
債務者が同時履行の抗弁権を有することを理由として、請求異議の訴えまたは執行文付与に対する異議の訴えを提起し、強制執行の不許を求めることができるか。
規範
引換給付判決等に基づき強制執行がなされる際、債務者の有する同時履行の抗弁権の存否は、執行官による強制執行の着手の時にのみ問題となる。したがって、同時履行の抗弁権の存在は、実体法上の請求権の消滅や変更を理由とする請求異議の訴え(民事執行法35条)および執行文付与に対する異議の訴え(同法34条)の事由には当たらない。
重要事実
上告人は、相手方から提起された強制執行に対し、同時履行の抗弁権を有することを理由として、旧民事訴訟法545条(現行民事執行法35条)の請求異議の訴えを提起した。原審は、同時履行の抗弁権の存否は執行着手時に問題となるにすぎず、請求異議の事由にはならないと判断したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
同時履行の抗弁権は、引換給付が条件となっている債務の履行において、債権者による反対給付の提供が執行開始の要件(民事執行法31条)となるにとどまる。このような執行開始要件の欠如は、執行手続上の瑕疵として執行異議(同法11条)で争うべき事項である。請求異議の訴えは債務名義に係る請求権の存否・内容を争うものであり、執行文付与に対する異議の訴えは付与要件を争うものであるが、同時履行の抗弁権はこれらの実体的な排斥事由には該当しないといえる。また、訴訟の形態で提起された主張を、決定手続である執行異議の申立てと解することも許されない。
結論
同時履行の抗弁権は、請求異議の訴えおよび執行文付与に対する異議の訴えの事由とはならない。
実務上の射程
反対給付と引換えに給付を命ずる判決がある場合、債務者が同時履行の抗弁を主張したいのであれば、執行異議(民執法11条)により争うべきであることを示している。請求異議の訴えと執行異議の使い分けを判断する基準として重要である。
事件番号: 昭和32(オ)381 / 裁判年月日: 昭和34年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請求異議の訴えにおける異議の事由が、前訴において当然に主張し得たものである場合には、これを前訴で主張せず別途本訴で主張することは許されない。この理は、執行力の排除を求める債務名義が判決であるか公正証書であるかによって差異を生じない。 第1 事案の概要:上告人らは、債務名義の執行力排除を求めて請求異…