貸主と借主の連帯保証人との間の金銭消費貸借公正証書中、将来発生する分を含めた遅延損害金債権の部分について、連帯保証及び公正証書作成嘱託の委任の各事実の不存在、予備的に遅延損害金債権の放棄を異議の事由とする請求異議の訴に対し請求棄却の確定判決があるときには、のちの請求異議の訴において、利息制限法の定めを根拠に遅延損害金債権のうち一定の率を超える部分の無効を異議の事由として主張することは、確定判決の既判力に抵触し、許されない。
公正証書に対する再度の請求異議の訴において異議事由の主張がさきの請求異議の訴に対する確定判決の既判力に抵触し許されないとされた事例
民訴法199条1項,民訴法545条,民訴法562条3項
判旨
請求異議の訴えの確定判決がある場合、その基準時前に生じていた利息制限法違反による債権の一部不存在の主張を、後の請求異議の訴えで再び主張することは既判力に抵触し許されない。
問題の所在(論点)
前訴において債権の発生原因や範囲が争われ、請求異議の訴えが棄却された後、再度、前訴の基準時前の事由(利息制限法違反)に基づき債権の一部不存在を主張することが、既判力(民事訴訟法114条1項)により遮断されるか。
規範
確定判決の既判力は、基準時(口頭弁論終結時)において主張し得た事由についても及ぶ。したがって、前訴において債権の全部または一部の不存在を主張して請求異議の訴えを提起し、これが棄却された場合、基準時前に存在していた事由に基づき、後の訴訟で当該債権の一部不存在を再度主張することは、前訴確定判決の既判力に抵触し、許されない。
重要事実
債権者(上告人)が債務者の連帯保証人(被上告人)に対し、金銭消費貸借契約公正証書に基づき強制執行をしようとした。被上告人は前訴(請求異議の訴え)において、保証の不成立や債務の放棄・消滅を主張したが、一部を除き棄却された。その後、被上告人は後訴を提起し、前訴の基準時より前に存在した事実である「利息制限法所定の制限利率を超える遅延損害金の無効」を根拠として、弁済充当の結果、残債務が消滅したと主張して執行力の排除を求めた。
あてはめ
前訴において被上告人は、債務の全部放棄や弁済による消滅を主張して執行力の排除を求めたが、裁判所は昭和32年9月1日以降の遅延損害金債権等の存在を認め、被上告人の請求を一部棄却した。本訴において被上告人が主張する「利息制限法に基づく制限利率への引き直し」という事由は、前訴の口頭弁論終結前に既に存在していた事由である。これを認めることは、前訴で確定した債権の存在(月2分5厘の利率に基づく債権)を蒸し返すものであり、前訴確定判決の既判力に抵触すると解される。よって、基準時現在において、公正証書記載の利率通りの債権が存在していたことを前提に弁済充当を計算すべきである。
結論
前訴の基準時前の事由に基づく制限利率への引き直し主張は既判力により許されず、それに基づき債務消滅を認めた原判決は既判力の法理を誤った違法がある。
実務上の射程
請求異議の訴え(民事執行法35条)における既判力の遮断効の範囲を示す。先行する請求異議の訴えで敗訴した場合、たとえ利息制限法違反という強行法規違反の事由であっても、基準時前の事由である限り、後訴でこれを主張することはできない。答案上は、遮断効が及ぶ「基準時前の事由」の具体例として、公序良俗や強行法規違反の主張が含まれることを示す際に有用である。
事件番号: 昭和49(オ)937 / 裁判年月日: 昭和51年10月21日 / 結論: 棄却
債権者から保証人に対する保証債務履行請求訴訟における保証人敗訴の判決が確定した後に債権者から主債務者に対する主債務履行請求訴訟における主債務者勝訴の判決が確定しても、主債務者勝訴の判決が保証債務履行請求訴訟の事実審口頭弁論終結の時までに生じた事由に基づいてされているときは、保証人は、右の主債務者勝訴の確定判決を保証人敗…